元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第464回
長寿受難時代だから情報開示せよ

放射線医として有名な近藤誠医師の書いた
「大学病院が患者を死なせるとき」
私が慶応大学医学部をやめない理由――という
文庫本の読後感の続きです。

近藤医師は、患者との目線を同じにするために、
ベッドの端に座って話をするようにしたそうです。
ドクハラ撃滅を提唱する土屋繁裕医師にしても、
主従関係を象徴する「患者の丸椅子」を止めたという話は
まえにも書きました。

この本は新しい療法を生み出した裏話というだけでなく、
一人の医師が貫いた医療改革の闘いの記録でもありましょう。
「情報開示も病院の足元から」――
こうした大切な教訓を残していると思います。
よく「情報開示」「納得治療」と声高に叫ばれ、
遅々として進まないのは、
「患者は医療消費者」という意識が
まだ希薄なことがあげられます。
しかし、現場の医師と病院が、
「命の救済業」としての
当たり前の商売倫理を持たないことが大きな要因です。

おまけに病院経営のノルマ化と高度医療機器化が
医療事故をいたずらに急増させています。
「病気そのものではなく治療で命を失う」
その危険がますます高まっています。
事故のたびに医師会サイドは
トカゲの尻尾切りはするものの
抜本改革の気配を見せません。

まさに長寿難病、いや長寿受難時代です。
患者を危険に晒す事件とは、
誤診や過誤だけではありません。
問答無用の拡大手術、
無謀な大量抗ガン剤投与などなど、
患者が注意すべきは「過療」つまり適切でない治療法にあります。

僕自身も別の大学病院で無謀な手術を拒否して脱走、
放射線根治治療と代替療法、食事療法で
5年健存を果たした身ですが、
とくに50歳からの長い長い後半生は、
医療ミスはもちろん、過剰治療で苦しめられたり、
命を落してはなりません。
この本もそうしたことを示唆している一冊だと思います。
元気で長生きも芸のうち――
これが賢い患者であり、これからの処世学なのです。


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