元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第743回
希望は絶望の中にあり

「希望在心中 生命在脚下」という言葉が好きで、
このコラムでもガン闘病の金言、
いや、人生処世のキーワードとして、
僕はよく使っています。
病に克つには、治療法や医師の選択に掛ってくるが、
最後のパワーは、患者自身の「生きるぞ!」という
「希望」にあるということです。

ちょっと、1年前の話になりますが、
僕たちは「有機農法を見学しながら、自然食を楽しむ」
――夏のスローヘルス研究会の合宿を
宮沢賢治の故郷・岩手県東山で開いたことがあります。
そのとき、開催日直前の2日前に、
突然、メールで参加申し込みをしてきた男性がいました。
ちょっと困ったのですが、
ホテルに問い合わせたら一部屋、追加できるというので、
人数も多いほうがにぎやかでよいと思って、
OKしたんです。

当日、現れたのはヒゲもじゃで黒ふちのメガネをかけた、
40代くらいの人でした。
でも、風貌に似合わず、話し方の優しい人で
「僕、仲間内では玄米部長といわれているんです」
と、自然食志向派らしい話をするので内心ホッとしたんです。
これがヒゲの山口泉さんとの始めての対面でした。
人間の縁って面白いですね。
あとで知ったのですが、山口さんは、
太宰治賞優秀賞や日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を
受賞している気鋭の作家だったのです。

やがて、「オーロラ交響曲の冬」(河出書房新社)という、
内容はシリアスでも
とても幻想的な書き下ろし小説が送られてきました。
少年少女たちをめぐる、
差別問題や核による被害をストレートに描いた物語でしたが、
「希望は絶望の中にある」ということを教えてくれました。
また、オリオン三重奏団とか、ホトホリ湖とか、
なにやら宮沢賢治の世界を彷彿とさせるものがあるのですが、
どこかトーンが違うなあと思っておりました。

日本、韓国、ロシアの少年少女たちが、
お互いが抱える差別意識を乗り越えて、
「絶望に負けず希望を掴む」という内容でしたから、
僕は心温かく励まされながら一気に読んでしまったのです。
まさに「希望在心中 生命在脚下」のメルヘンですから、
もし童話好きの読者がいたら、ぜひ読んでみてください。
いま大人が読むべき感動の名作です。

ところが、先日、1年越しで、
突然、この山口泉さんから、
「宮澤賢治伝説・・ガス室のなかの『希望』へ」
(河出書房新社)という
490ページの分厚い評論集が届いたのです。


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