元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第975回
メスを捨てる「勇気」について

「週刊金曜日」の社長である
黒川宣之さんの多重ガンとの闘病記=
「体験的治療学」に登場。
手術を避けて、
前立腺治療のブラキセラピーという最新療法で
3泊4日で退院し、
いまはバリバリ仕事をこなしている
翻訳家・藤野邦夫さんの話の続きです

10年を超える多重ガンとの闘いの中で、
さまざまな挑戦を続けてきた黒川宣之さんは、
藤野さんの治療選択法を取り上げることによって、
「これからのガン治療のあり方」、
とくに「放射線治療の再評価」について、
大切な問題を提起しております。
少し、抜粋引用させてもらいましょう。

          *

放射線治療の経験豊富な
西尾正道・北海道がんセンター放射線診療部長は
「たとえば咽頭ガン第三期の場合、
 16回に分割して21日間照射する放射線総量が
 52.5グレイ(吸収線量の単位)だと、
 再発率は70%だが、副作用はない。
 57.5グレイだと再発率は30%に下がるが、
 5%ほどの患者に甲状軟骨が腐るなどの副作用が出る。
 5%の副作用を覚悟して再発率を下げるかどうか、
 この紙一重のところで治療している、
 いわば隙間産業なんです」と話す。

          *

黒川レポートは、
治療の成否は
「放射線の最適線量をいかに病巣に当てるかに尽きる」、
つまり、紙一重の「医療技術」が
ガン治療に進歩をもたらしていると指摘しています。
この放射線の技術進歩については、
集中照射の「ガンマナイフ」療法、
動く病巣も捕らえる「サイバーナイフ」療法、
そして、体内の一定の深さに照射できる
「陽子線・重粒子線」療法についても
言及していますが、
さらに、このレポートで、
患者、ならびに多くの読者が注目しておくべきは、
次の医師のコメントでしょう。

          *

20ヵ国語を操る国際派婦人科医で、
手術の名手でもあった岡山大学の元総長、
故八木日出雄さんは50年も前に
「もし放射線の治療成績が手術に匹敵するようになれば、
 潔くメスを捨てるべきだ」と唱えた。(略)
問題はバランスのとれた治療が出来るかどうかだ。

          *

いま医療界やマスコミで
“常識”と考えられている「手術至上主義」に
疑問が投げかる貴重なコメントでしょう。
まさにガンの治療現場では、
なるべく心身に負担をかけない
QOL(命の質)を高める治療が期待されているわけで、
1年1年、進歩する医療技術の情報には、
現場の医師は当然のことですが、
ガン患者や家族も、
耳をそばだてておくことが大切です。
そして、自分に納得のいく治療の組み合わせ、
悔いのない人生を設計する――、
こうした「命の選択」の時代に入ったといえるでしょう。
いや、ケースによっては「メスを捨てる勇気」が、
外科医にも問われてきたといったらよいと思います。

さて、この黒川さんや藤野さんの
貴重なる「体験的闘病法」については、
4月21日に開かれた、
僕たちの「スローヘルス研究会」の会合でも、
お二人から報告があり、
患者や家族のみなさんの間で活発に論議されましたが、
その内容は、また改めて報告いたします。


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2005年4月28日(木)

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