元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1240回
続・テレビのガン番組を問う!

1月7日、8日の連夜に渡って、
NHKの特番「日本のがん医療を問う」が放映され、
全国の患者や家族の要望で、
腰の重い厚生労働省も、
やっとガン対策に「10億円」をかけた――、
治療成績や情報公開する病院もポツポツと現れた――、
しかし、具体的施策は曖昧模糊――、
「30年先じゃ、命が持たない」という
患者の感想も飛び出した――といった、
このガン番組に対する僕の感想の続きです

もちろん、番組構成は、さすがNHKです。
じつにたくみに出来ていました。
厚生労働省の役人や国立がんセンターの総長が、
モゴモゴといいながらも
「努力いたします」といえば、
スタジオからは拍手が起こっていました。

しかし、どうでしょうか?
なぜ、これだけ“画期的”な
ガン患者の動きが出てきたというのに、
「30年先じゃ、命が持たない」という
一部の患者さんから溜息が出たりするのか?
この番組を見れば見るほど、
なぜ、現実の患者や家族の悩み、不安、
そして治療に対する憤りがおさまらないのか?

この番組がガン後進国の
日本の現状を問う制作意欲は分かりますが、
ことの“問題の本質”を避けている感じが、
とても気になりました。
番組を作るにあたって、
ガン治療の「技術」と「制度」にのみに限定すると、
今回のように“画龍点睛”を欠く、
結果として“いのちないがしろ”の番組となるのだなあ――、
これが一人の延命患者としての率直な感想でした。

ちなみに、この番組で扱う治療法は、
決して、手術、抗がん剤、放射線のいわゆる
「標準治療の枠組み」から一歩も出ようとはしません。
世間や医療業界の反響、さらに
監督官庁への気遣いがあるためでしょう、
欧米では、どんどん見直されている
「代替療法」や「漢方療法」などについては
もちろん、タブー視して触れない。
いきおい、患者の複雑ないのちの疑問、
心身の悩みを無視して、
やみくもに、最新の欧米治療と
法律制度の“モノマネ”を薦める
「絵に描いたモチ」のような番組構成に
突っ走っていくのではないか?

たしかに、いかがわしい売薬業者が跋扈したりするので、
国の取り締まりは必要ですが、
こと「いのち」に関しては、あくまで「国主導」ではなく、
主役は「患者ひとりひとり」です。
もちろん、多くの患者や家族のみなさんも
そんなことは分かった上で、
「国のガン行政の遅れ」を正しているわけでしょうが、
テレビ局には世論を形成する一大影響力がありますから、
なんとしても、ことガンに関しては、
全国の医師と病院を
ただの“機械修理工”にしてほしくない――、
統一化、国際化、法制化、国主導化に
“妄想”を抱かせてほしくない――、
欧米の医療行政のモノマネが“正義の味方”といった
軽率な“いのちの妄想番組”を作らないでほしい――、
これが、僕が、NHKの特番・
「日本のがん医療を問う」を見て感じた危惧でした。

まえにも書きましたが、いのちの問題とは、
プラグマティックではなく、
ホリスティックに扱うべきものなのです。
主役は「国」ではなく、
あくまで「患者ひとりひとり」なのです。
あなたはどう思いましたか?


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2006年1月18日(水)

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