元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1423回
「神の手」と「ブラックジャック」

3年前に旅立ってしまった、
作家の倉本四郎さんとは、よく、
「ガンは、身体のみならず、
人間の生きがいというか、
精神性まで蝕むミステリアスな病気だなあ」と
お互いにメールで話し合ったものでした。
「ガンって、医学や治療の問題以上に、
哲学的な問題を投げかける、不思議なヤツだなあ」と
笑ったり、怒ったりしたものでした。

ガンになってしまったら、
ただ大病院や有名医師に頼るだけでなく、
患者自らが、第2の人生設計の方針を考え、
治療だけでなく、日ごろの養生も含めて、
ひとりひとりの処世学を再設計すべきだ――、
治療法のみならず、家族と相談しながら、
精神的な立脚点を、しっかりと組み替えていくことが、
ガンを乗り越える近道だと言う話の続きです。

なんども繰り返して書きますが、
ガンはオデキや感染症とは違う、
「突発性老化病」というべき難病、
つまり、体もこころも蝕む生活習慣病ですから、
マスコミで喧伝するような「一発特効薬」など
いまだ、この地球上に存在していません。
また、メディアのガン記事というと、
患者のための情報と謳いつつ、
大病院の有名医師たちから発信される、
手術や抗ガン剤、放射線の
「自慢話的治療法」がたくさん掲載されます。
やれ、この医師がガン治療の「神の手だ」、
この外科医が手術上手の「ブラックジャックだ」という記事です。

たしかに、手術や臓器移植といった
患者を「機械並みに修理する」医学技術の進歩は目覚しく、
心臓病や腎臓病から助かるケースも増えてきました。
しかし、ことガンに関しては
ガン治療に「神の手」や「ブラックジャック」のような医師を
クローズアップして、あたかも「一発完治療法」があると、
錯覚を起こさせるような「ガン記事」は、
充分に注意して読みましょう。

「病院治療と入退院」だけで、
ガンは完治などできる病気ではないのです。
いま日本では、毎年、32万人がガンで亡くなる一方で、
大病院退院後、300万人が
再発転移の不安を抱えて過ごしています。
退院後、さらに多くの患者が
いろいろ工夫してガンと闘っているわけです。
たとえ、再入院しても、また、自宅での闘病を続け、
多くの患者がなんとか延命を果たしているわけです。

前回も書きましたように、
ガンは「治療技術のよしあし」のレベルだけで片付く
病気ではありません。
治療法、養生法、そして処世観の3つをいかに
患者と家族が設計していくか?
ガン治療は、まさに人生学、いや哲学的問題を、
ひとりひとりの患者に問いかけているわけです、
哲学などというと面妖だと言う向きには、
「第2の人生の生き方」と考えて下さい。
しっかりとした心の覚悟、つまり処世学が大切なのです。

というわけで、僕たちの研究会では
「スローヘルス患者学」を提唱し、
この長寿災難時代にこそ、
一人一人が、ゆったり長生きできるように、
創造的患者学を持つべきだと提案しているわけです。


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2006年7月20日(木)

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