元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1544回
こんなにおかしい! 日本の薬事情

寒さの厳しい季節になって、
風邪を引いた、足腰が痛い、手術痕がうずく・・・などなど、
ついつい病院に行く機会が増えていませんか?
でも、うんざりするのは、相変わらずの3時間待ち、
3分間治療、長時間の検査漬けです。
おまけに、帰りに持たされる山のような大量の薬には、
誰しもが辟易するものです。
古今のホリスティックな医師ならば、
「ちょっとした風邪なら、むやみに解熱剤など飲むな。
体を温めて、しばらく安静にしていれば治る」
と教えてくれるわけですが、
ついつい薬に頼りたくなるのが、患者の悲しさです。
もちろん、最近は、
薬局から薬と一緒に説明書を渡されるようになりましたが、
薬は「毒にもなれば薬にもなる」わけで、
これからの患者は、薬の成分や功罪については
より詳しく知っておく必要があります。
薬で症状を悪化させたり、
命を縮めたりしたのでは元も子もないからです。

と、そうしたことを考えているとき、
タイミングよく送られてきたのが、
「くすりの裏側―これを飲んで大丈夫? 」
(堀越 勇・著 集英社文庫500円税込)
という新刊の文庫本でした。
著者は、富山医科薬科大学・名誉教授の堀越勇さんという方ですが、
僕は面識のないので、戸惑いながら読んでいると
最後のページに「構成・永田由紀子」と書いてありました。
後で調べたら、
贈ってくれたのはこの人で、昔、僕が女性雑誌の編集長のころ、
いろいろ仕事をお願いしたことのある優秀なフリーライターです。
「いのちの手帖」の創刊パーティにも来てくれて、
僕たちのスローヘルス(温和療法)
にも興味を持ってくれている人ですから、
早速、新刊書を送ってくれたようでした。

ともあれ、著者は「鬼の薬剤部長」と異名を持つ、
薬の功罪を知り尽くした薬学界の名物先生らしいのです。
「薬の非常識な使用と嘘が及ぼす恐怖の現実!
めまぐるしく新薬が誕生する現代。
健康にいいという言葉に踊らされて、
実は安全ではない薬を飲まされているとしたら…。
学会圧力やメーカーとの癒着を逃れた
薬学界の異端児が放つ、辛口薬事批評」
と、出版社からも威勢のよいメッセージが配信されていますが、
通読してみると、小気味よいほど、薬のウソとホントについて、
包み隠さず教えてくれているのが気に入りました。
ちなみに目次は、以下のようなものです。

第1章 こんなにおかしい! 日本の薬事情
第2章 すべての薬がいい薬とは限らない
第3章 間違った使い方が命取り
第4章 それでもまだ取りますか?
第5章 漢方薬はすべて安全と思い込んでいませんか?

冒頭、第1章「こんなにおかしい! 日本の薬事情」の
「世界に比べ、こんなに多い日本の薬品数」
から抜粋紹介しましょう。

           *

1979年、富山医科薬科大学附属病院(現・富山大学附属病院)
の創設時、私は採用医薬品について
薬事委員会に次のような提案を行い、了承されました。
医薬品の採用は
「ミニマムエッセンシャル(必要最小限)を原則とし、
オリジナリティー(独創性)と
プライオリティー(先取権)を尊重する」。
また、採用するかどうかの決定は「多数決による裁決は行わず、
公開討論し、採用を申請した診療科と薬剤部の間で
合意の得られた医薬品のみを採用するものとする」
というものでした。
 その後、一部の診療科からは
「われわれの使いたい薬を薬剤部はなぜ制限するのか」
というクレームが、メーカーからは
「共同開発品はそれぞれ採用して欲しい」
という要望が出されました。
しかし、私は原則を盾にこれらを拒否したため、
「鬼の薬剤部長」という大変名誉な! 
渾名を頂戴してしまいました。

           *

治療や薬の本というと、
どうも病院や製薬会社におもねった本があふれかえり、
患者の役に立つものが少ないのですが、
「くすりの世界も、大いに情報公開せよ」と、
どうやら、この本はホンモノなのです。
薬嫌いの人も、薬好きの人も必読本です。


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2006年11月18日(土)

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