元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1545回
日本の薬は多すぎる

薬学界の「鬼部長」と異名を持つ名物先生=
富山医科薬科大学・名誉教授・堀越勇さんの新刊文庫本、
「くすりの裏側―これを飲んで大丈夫? 」
(堀越 勇・著 集英社文庫500円税込)の話の続きです。

WHO=世界保健機関で
エッセンシャルドラッグ(注・必要最小限の薬)として
リストアップされている薬は
わずかに312種類だそうですが・・・。

         *

それに比べて日本では商品名で1万7000種類、
成分数で約2400種類もあります。
この中には、日本でしか使われていない薬もあります。
この数字を見ていると、最低限必要な薬というものが
こんなにも少ないのかと驚かされると同時に、
日本の医療用医薬品の多さにも驚かされます(略)
「エッセンシャルドラッグ(必要最小限の薬)」
を使うという姿勢は、
世界の先進国ではすでに共通の認識で、
なぜかその点では日本だけ
取り残されているという思いがしています。

          *

この「世界に比べ、こんなに多い日本の薬品数」
という警鐘の項目に始まって、
以下、専門的なデータを縦横に取り揃えて、
日本の薬の裏側、
医薬制度のおかしさを一刀両断しているわけですから、
薬業界や病院サイドからは戦々恐々。
まさに「鬼の薬剤部長」の異名をつけられるわけでしょう。

以下、目次の構成をあげるだけでも、
この本の面白いところが分かるはずです。
「くすり漬け療法はなぜなくならないか」
「総合感冒薬を飲むと風邪がますます悪化する?」
「二重目隠し試験でないと、薬の効き目は分からない!」
「解熱剤鎮痛剤を使い続ける危険性」
「抗痴呆薬で痴呆は治らない」・・・
患者にとっては目にウロコの痛快な本です。

あまりにデータが豊富で、
すべてを紹介するわけには行きませんから
興味をもった人は、一度手にすることをおすすめしますが、
僕がとくに面白く読んだのは、
「第2章 すべての薬がいい薬とは限らない」の
「ゴールデンピル賞を受賞した薬」という項目です。

くすりに関する非営利組織「NPO医薬ビジランスセンター」※1
が2002年10月に開催したセミナーで、
「ゴールデンピル賞」なるものを発表しました。
「ゴールデンピル賞」とは医療にとって本当に必要であり、
安くて良いお薬を意味します。
「エッセンシャルドラッグ」(必要最小限の薬)の多くは
ゴールデンピルと言えましょう。
フランスでは四年前から「La Revue Prescrire]誌が
「ゴールデンピル賞」の表彰を行なっています。

薬効1 胃腸用剤 胃腸用剤 降圧剤
薬効2 抗潰瘍剤 同上(H2ブロッカー) ACE阻害剤
一般名 スクラルファート シメチジン カプトプリル
商品名 アルサルミン タガメット カプトリル

ちなみに、「ゴールデンピル賞にノミネートされたくすりとは、
別表のように普段よく使われている
薬などを含めて10種です。

日本では、マスメディアとて、
薬業界や病院の意向におもねった
情報隠蔽式の報道が多いというのに、
医療はもとより、薬に関する
情報公開も、一歩一歩ですが進んできたというのです。


※1 http://www.npojip.org/jip_menu/jindex.htm


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2006年11月19日(日)

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