元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1556回
日本の医療、空白の130年

ガンや心臓病、はたまた糖尿病ばかりか、
メタボリック症候群といった体を蝕む生活難病
さらに、いじめ、うつ病、自殺、家族殺しといった
こころの惨事――、これまでの日本人が体験したことのない
体だけでなく「心の病」が蔓延しているためでしょう。
医学セミナーだけでなく、全国各地で各種の健康セミナーや
カウンセリングセミナーが関心を集めています。

前回、紹介した東京女子医大附属青山クリニック所長の
川嶋朗医師の講演の中で、とくに印象に残った話がありました。
日本の医学界では、いかがわしい医療として
軽視されている「鍼灸」について、
「鍼灸は日本より欧米で評価が高い。
自然医療の人気ナンバー5に入っています。
たとえば、日本生まれの食事療法・
マクロビオティック玄米菜食法が欧米で高く評価され、
最近、逆輸入されて日本で流行り始めたように、
やがて鍼灸も逆輸入されることになるでしょう」
と話しておられましたが、多くの大学病院では無視されている、
代替療法=自然医療が見直されるだろうという予言は注目です。
つまり、世界的な「治し」から「癒し」への見直しです。

日本のガン病棟でも然り。
手術や抗ガン剤という荒治療の間隙を縫って、
漢方やサプリメントといった代替療法を併用。
なんとか、いのち永らえようとする患者が
激増しているではありませんか? 
また美容やストレス解消、病気予防法としても、
気功やヨガ、玄米菜食法はもちろん、
アロマセラピー(芳香療法)やフィトセラピー(植物療法)
さらにメディテーション(瞑想療法)など、
ヒーリングセラピーといわれるものが、
とくに女性の間で大流行しています。
「治し」(treatment therapy)から
「癒し」(healing therapy)へ――
より人間らしい「いのち学」への期待が、
この長寿難病時代に渦巻いている。
ずばり、大病院の医師より、いま患者が
「新たないのち学」に気づき始めたといっても良いと思います。
治しの「治」も、癒しの「癒」も
語源的には「道具を使って治す」という意味ですが、
「愈」には「心」がついているからではないでしょうか? 

ともあれ、この長寿難病時代、情報過多時代を迎えて、
ことガンにかかわる医療システムは限界を示しています。
政治経済や教育の仕組みが
戦後「60年の限界」を露呈して、構造改革と証する
基本法や憲法の改正が論議の的になっていますが、
こと、人間の「いのち」に関わる医療の仕組みは、
それどころではない。
130年の旧弊の中に安穏としている・・・、
日本の医療は「空白の130年」の中にいるといって
言い過ぎではないと思います。

この近代西洋医学を主軸にした130年の医療システムは
まさに哲学者デカルト以来の物心二元論、つまり、
いのち=物質、体=機械という考え方に基づいて
形成されてきました。
本来「体」「心」「魂」のつながりで成り立っている生命体を、
機械のように修理すればことたりると処理して来ました。
「心」「魂」といった目に見えない作用に対する研究は、
エビデンス(立証)を確定しがたい、いかがわしい学問だ、
医学だとして、徹底的にシステムから排除してきたわけです。

たしかに、130年前に、ドイツ医学をものまねした、
近代日本の「応急処置医学」=機械修理医学は、
戦争や災害・事故による傷病や
細菌による感染症を治してきましたが、
皮肉なことに、その結果、昨今、もたらされた、
長寿病、成熟病の蔓延に、いま為す術(すべ)を失いつつある―、
日本の医療「130年の空白」に気づくか気づかないか?
ここが、ガン患者が生きながらえるか? 命を掴むかどうか?
の「運命の分かれ道」になると、僕は痛感しているわけです。


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2006年11月30日(木)

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