元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1703回
痛快! 五木さんVS帯津さんの健康問答集

いまの日本で、おそらく生業的な固定観念に縛られず、
“複雑系”のいのちの謎を、いわば“直感系”で、
多彩に語れる人は、このふたりをおいてない――、
そうした待望の顔合わせの「現代養生訓」ともいえる
対談集が、先日、送られてきました。

作家・五木寛之さんと医師・帯津良一さんの近刊
「健康問答」(平凡社)という分厚い本です。
発売そうそう増刷決定!と新聞広告にも大きく載りましたので、
みなさんの中にはすでに手にしている人も多いと思います。

現代養生訓などというと、
「納豆を食べれば痩せる」式の“短絡系”か、
「ガンは手術をすれば完治する」といった“説教系”の両極で、
かえって、患者の気分を逆なでするような
“似非療法読本”が多い。
それに抗して「健康の常識には危険がいっぱい----本当は、
どうなのだ!」と
立ちはだかる書というわけですから、
さぞや強面の論争本かというと、さにあらず。
話は、納豆やビール、カツ丼は無論のこと、
普通の病院では聞きなれないホメオパシーもOリングも、
さらにエントロピーもホリスティックも俎上に乗せ、
とどのつまりは、300億年の虚空やら、
極楽浄土を巡って旅をする――、
まさに時空を駆け巡る「いのち丸ごと」の問答集ですから、
読んだあとの充実感は間違いない――これが僕の感想でした。

「水、牛乳、緑茶、玄米食、サプリメント、
最新医薬、抗菌・防菌、気功、ヨガ、
代替医療、免疫医療、ウォーキング・・・
いったい、なにをすれば、元気で長生きできるのか。
ガン治療からウツ病まで、当代随一の名医に、作家が本音で迫る。
混乱する情報の中から、最良の道を選ぶには? 
心と体の健康が気になる現代人必読の、平成養生訓」というのが
版元からの謳い文句のようですが、
わが身の臓腑に問いただしながら、
ひとつつひとつ味わうように検証していく語りが、
じつに直感的で面白い。
さまざまに患者を悩ませている
健康療法を洗いざらい語り合う中で、
とくに、本来の役割を忘れた医師たちを、
やんわりと諭す場面で、お互い、意気投合するところが、
読者や患者にとっては、たまらなく痛快です。

                    *

五木 「人間を見るな。病気そのものを診よ」というのは、
    十八世紀にパリ医院が設立されたときの、
    情熱的なスローガンであったわけだけれど、
    これは、それまでの御殿医的な医者とか、
    占い師みたいな医者とかにくらべると、
    病気の原因をしっかり診る、
    王様であろうと、病人なんだという、
    すばらしい宣言なんですよ。
    それが二百年、三百年たつと、逆に病気しか診ないで、
    人間を見ないということになってくるんですね。
    いまは「病気とともに人間を見よ。
    人間とともに病気を診よ」という
    時代にはいってきたわけですね。

帯津 それが、ホリスティックになったわけで、
    人間まるごと診るという。

五木 帯津さんはその先駆者でいらっしゃる。(略)

帯津 でも、見た感じは、ほんとうに健康そうですね。

五木 やっぱり、見ればわかるんですか。

帯津 なんとなくわかりますね。
    診察って、最終的には直感ですから。
    このごろその傾向が
    どんどん強くなってきてしまっているのです。

五木 それはすごく大事なことですね。
    このあいだ、中医学の漢方の先生が
    書いていらしたけれども、自分たち漢方医は、
    患者さんがドアを開けてはいってくるときから、
    顔色や歩き方や、挨拶のしかたや声色やいろいろ眺めて、
    それでだいたい、もう診察が終わると。
    でも、いまのお医者さんって、
    うつむいてコンピュータで
    検査の結果しかみていないという。(以下略)

          *

さて、この実用書風に構成された前半の部分はもとより、、
さらに、生き方から死に方まで、「死生の哲学」といいますか、
「いのち学」を展望する、本書の後半の部分が圧巻です。
いのち丸ごとの謎解きが、
ずしりとした存在感をもって
博学多彩に展開しているからです。


←前回記事へ

2007年4月26日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ