元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1704回
五木さんと帯津さんの「魂のエンパシー」

作家・五木寛之さんと医師・帯津良一さんの近刊
「健康問答」(平凡社)という分厚い本の紹介の続きです。

健康実用書風に構成された前半の部分はもとより、、
さらに、生き方から死に方まで「死生の哲学」といいますか、
ほんものの「いのち学」を展望する、
本書の後半の部分が圧巻ですから、
まだ読んでいない人は、ぜひ熟読玩味して、
日ごろの養生・治療設計、
人生再設計の参考にするとよいと思います。
普通の医学書や大学病院などでは聞けない
「いのち丸ごと」の話がぎっしり詰まっています。

           *

五木 死はかならず発症する。
    人は死のキャリアとして生まれ、
    死は治療できないんだから、
    養生も気休めと思ってやらなければ
    だめだというのが持論です。(略)

帯津 ええ、そうですね。

五木 あとは骨休め。ちゃんと骨を休めるということですね。
    私は睡眠時間が短かったりするんですが、
    横になっている時間は長くしようと。
    そのあいだ、骨を休める。
    あともうひとつは、箸休め。
    日本人は、やっぱり食べすぎだと思う。
    それで、養生法は「気休め、骨休め、箸休め」
    の三つだといっているわけです。(略)

五木 帯津さんが書かれている、
    人間にはエントロピーを
    リフレッシュしていく力があるという
    お話にも啓発されました。(略)

帯津 生命活動を営むために、体内では、
    日夜さまざまな反応が行われています。
    その反応に必要なエネルギーは、
    太陽から植物の光合成を経て、
    体内にはいってきて、
    それぞれの反応に即したエネルギーに変換されます。
    エネルギーの変換が起るたびに、
    エントロピーが発生します。
    エントロピーが蓄積されていくと、
    体内の秩序が乱れて、健康が害されていきます。
    にもかかわらず、
    私たちは日々溌剌として
    健康を維持しているのはなぜなのか。(略)
    つまり、私たちは、汗や吐く息や大小便に、
    エントロピーをくっつけて捨てているのです。

          *

それぞれの「いのち丸ごとの養生」つまり、
ホリスティックな養生のヒケツについて、
五木さんは「気休め、骨休め、箸休め」だとし、
医師の帯津さんが「エントロピーの法則」、
つまり「生命エネルギー劣化の法則」を使って、
自然治癒力を呼び起こす
「攻めの養生法」のすすめを説いているわけです。
さらに、おふたりの話は、死との対面をどう考えるか?
誰しもが抱える、いのちの問題の究極に迫っていきます。

          *

帯津 私は、医療のなかで、死んでいく患者さんとつき合いながら
    なんとなく死後の世界はある。
    生命は死んで虚空に還っていくという、
    ひとつの大きな生命の流れがあるということを、
    考えるようになりました。
    それで、『大河の一滴』とか、
    五木さんの本を読んだりしますと、
    だいたい同じような考えをされているので、
    いつもびっくりするんですけど。(略)
    それはビックバンから百五十億年だから。
    往復三百億年の旅です。(略)
    今日という日も、この循環の中の一日。
    だから、今日という一日を
    精一杯生きるのだということを話します。

五木 それに対して、私は循環論なんです。
    真宗の思想で往還(おうげん)といいますが、
    一遍、浄土に行って、
    しばらくそこで心を休めて浄化されて、
    ふたたび菩薩行のために
    地上に戻ってくるんだという考えです。
    往っては戻り、往っては戻り。
    それで僕は救われたわけですよ。
    なぜかというと、天国というか、
    浄土というのは退屈そうなんだもの(笑い)。

        *

いわば、帯津さんが「魂の帰還論」を、
五木さんが「魂の循環論」を、
さすが生老病死の修羅場を乗り越え、
時空を巡る、大いなる「いのちの旅路」を愉しむおふたりです。
この一冊が醸し出す、生命場のエネルギーが微妙に共振し、
増幅するエンパシー(共感)な対談集となっていますから、
読む人に、きっとトキメキのパワーが
ふつふつと湧いてくると思います。
医学、哲学、文学、宗教の難しい話も
平易に語ってくれていますから、
一気に通読することをお奨めします。


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2007年4月27日(金)

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