元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1719回
患者漂流「貧乏人は死になさい?」

いやな言葉ですが、
「ガン難民」というキーワードが問題になっています。
そればかりではありません。
多くの脳卒中や認知症の患者も巻き込んで、
いま実施されている医療改革、いや医療費改悪が
「医療・介護難民」化現象を起こしているようなのです。
これを「患者漂流」といいます。

「貧乏人は病院にかかれない」
「地方の人は病院にかかれない」
「高齢者やリハビリ患者は長期入院ができない」
この少子高齢化、さらに医療費財政の悪化による
医療制度改革で長期の入院や治療が打ち切られる・・・
というわけです。

この四月の診療報酬改定にポイントを当てて、
とくに少子高齢化時代の「医療制度」と「医療費」の両面から
「いのち」防衛の問題を鋭くえぐった新刊書が送られてきました。

「患者漂流―もうあなたは病気になれない」
という新書です。
著者の中野次郎さんは、1925年兵庫県生まれ。
兵庫県立医専(現・神戸大学医学部)卒業。50年に渡米。
オクラホマ大学教授を経て86年ハワイにて循環器内科開業。
00年より北摂総合病院理事――、というという経歴の持ち主で、
「誤診列島=ニッポンの医師はなぜミスを犯すのか」
といった著書もたくさん出しております。
医療後進国ニッポンの医療崩壊シナリオを読み込んで、
患者が自分自身を守るための「ヒント」を提案しているわけです。
目からウロコの話がたくさん詰まった本ですから、
とくに高齢患者を抱えたご家族は必読です。

目次を見ただけで、これから日本列島を襲う、
「医療難民」「介護難民」の未来図が手に取るようにわかります。

第一章 貧乏人は死になさい
第二章 産婦人科医がいない、小児科医がいない
第三章 医療ミスはなぜ起こるのか
第四章 薬あるとて毒飲むべからず
第五章 君たちは医者になるな!
第六章 病院は危険な場所でもある
第七章 良い主治医の選び方
第八章 このままでは医療は崩壊する

たとえば、 四月の診療報酬改定は、
脳卒中などの脳血管疾患や骨折、肺炎といった
リハビリテーションが必要な疾患を四つに分け、
最大で「百八十日」の日数制限を設けた――、
高齢者の患者さんの長期入院はご法度というわけです。
これから激増する慢性病の患者は、医療から見放され、
受け皿の病院も施設もないまま、
行き場を失い「漂流」するというのです。

ともあれ、医療に「日数制限」が設けられたのは初めてであり、
本格化する医療費抑制の前哨戦が始まった、
とくに地方の高齢者は
「病気になれない時代」がやってきたのでしょう。

さらに、本書には、
小児科・産婦人科の極端な医師不足――、
病院の統廃合による病院不足――、
技量不足の医師たちによる医療過誤――などの問題点、
つまり、多くの患者と家族を「難民・漂流」へと陥れる、
日本の医療制度の恐るべきシナリオが予言されています。
いま元気な30代、40代、50代とて「明日はわが身」、
これが「いのち防衛不安」の現実なのです。

「美しい国」はどこへ行ったの? などと
他人事のように嘆いてばかりいられません。
自分のため、そして家族のため、
これからの「いのち学」の知恵が詰まっていますから、
ぜひ、手にとって読んでみてください。


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2007年5月12日(土)

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