元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1967回
病床楽吟(1)

ただ気分転換やストレス発散が、
病気に効果があるというお呪いみたいな話ではなく,
笑う、歌う、本を読む、物を書く・・・といった精神的作業が、
反エントロピー効果を上げる、
つまり、蘇生のエネルギーをもたらすと精神学説が、
またぞろ、21世紀の今、見直されている――、
つまり、ガンは心身を統合する
ホリスティック療法で対処すべき時代の到来だ――、
という話の続きです。

最近、僕たちジャーナリストの先輩同輩に
よる年波と共に、ガンになる人が激増しています。
高度経済成長の景気のよい時代に、
エネルギッシュに稼いだ反面、
私生活も過煙過食暴飲はもとより、
徹夜の仕事などいといませんでしたから、
大抵の元編集長や元記者や元カメラマンが心身が劣化して
肺ガンや胃ガンや僕のように食道ガンに襲われるわけです。

もちろん、いさぎよい「ハラキリ派」と
僕のようにずる賢い「手術拒否派」に分かれるわけですが、
いずれにしても、
なるべく治療のダメージを最小限に抑えて、
治療後は、とにかく免疫力を高める、
つまり、体を劣化させない養生法を
自らで編み出さないと、
なかなか元気に蘇生とはいかないわけです。
食事療法というのは女性には向いているようで、
男性は整体術や呼吸法を養生法に取り入れて
自らの反エントロピーの蘇生効果を高めている人が
多いように思います。

とくに、ジャーナリストの仲間は、
本を読む、物を書くということに、
心のトキメキを感じる人種ですので、
この心のストレス発散法が、
身体にも好結果を及ぼす人が多いようです。
ま、編集者というのは、作家に原稿ばかり頼んで、
自らうまい文章を書けない人は意外と多いのですが、
いずれにしても、詩を書く、短歌や俳句を作る、
もちろん小説やノンフィクションを書くといったことが、
「思わぬ心身の創造的進化」をもたらすようなのです。
もちろん、物を書くといっても、
自分の得意とするジャンルを楽しんでモノにすることが肝要です。
嫌なもの、苦手なものを書いたり、歌ったりするのは、
かえってストレスを溜め込んで、
心身のエネルギーを劣化させてしまいます。
もし、あなたが、若き日に、
そうした文才趣味が少しでもあれば、
試してみてください。
絵を描く趣味もいいですね。

僕の大先輩に講談社の常務をやっておられた、
内田勝さんという天才的でタフな編集者がいますが、
40代、50代の人なら、懐かしい、
少年マガジンの「巨人の星」や「天才バカボン」といった
漫画の名作を作った名編集長です。
いまはソニー・ピクチャーズのアニメ専門チャンネル
ANIMAXのプロデューサーをやっておられますが、
丁度、昨年の今頃、肺ガンと宣告されて、手術ではなく、
抗ガン剤治療とハナビラタケの養生法で元気に過ごしています。

その内田さんの心身エネルギーアップの養生法の一つが
趣味の短歌つくりにあるようで、
入院中に作りまくった中から、
名作を50首、「病床楽吟」と題して巻紙に印刷し、
同僚の見舞い謝礼に送ってきたわけです。
●愚(ぐ)なるかな万本の煙草千升の酒
地獄の淵へ猪突猛進
*小生、30代〜40代のモーレツ時代、亥年生まれの性格の故か、
地獄が大口を開けて待っているのもものかは、
ただ猛進するのみの日々であった。
されど憶々(ああ)、“愚なる人生”、また楽しからずや。

といった、なんともパワフルで痛快な歌ばかりですから、
うん、これはまさに「病床楽吟」、
いのちのエネルギーを高める心の養生法にぴったりだと思って、
「いのちの手帖」第4号にも原稿をお願いしたわけです。


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2008年1月15日(火)

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