元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第2066回
だから野球は面白い

僕は「隠れジャイアンツ」ですので、
今季当初の巨人軍5連敗には、
いささか呆れたものですが、
プロ野球シーズンになると
CS、BSで生放送を見られますから
愚劣なテレビ番組を見なくてすむのでとても嬉しい季節なんです。

あまりに古くて化石のような話となりますが、
小学生のころは、
「川上の赤バット、大下の青バット」が炸裂する時代で、
プロ野球選手はなににも勝る憧れのヒーローでしたし、
少年野球の漫画が大好きでした。
僕自身、小学生の頃、野球は下手でしたが、
あの野球チームが持つ、独特の友情といいますか、
「仲良し連帯感」がとても好きでした。
野球の面白さは記録や勝負にありましょうが、
なんといってもあの独特のチームプレイというか、
仲間が作り出す「グループ意識」が面白いので、
根強い人気があるのだと思っています。

さて、先日「タッチアップ」と題する高校野球をテーマとした、
とても面白い青春小説の新刊が届きました。
著者は数々のノンフィクションで賞を貰っている田澤拓也さんです。

田澤さんには、小誌「いのちの手帖」にも、
「渋沢栄一を歩く」「無用の達人・山崎方代」といった
作品の裏話をエッセイで寄稿していただいたことがあるので
覚えている人もいるでしょう。

今度の新作「タッチアップ」は、
じつにドラマチックな筋立てとキャラクターの多彩さで
面白かったので、僕は、
ドキドキしながら一気に読んでしまいました。

本の帯に書かれた「あらすじ」は以下のようなものです――、
「神奈川県立・北桜高校が
甲子園で準優勝に輝いたのは40年も前のこと。
今や部員にも事欠く1・2回戦敗退が常の弱小校。
その野球部に、伊達‐宮武のバッテリーら
中学軟式野球の"ドリームボーイ"たちが入学してきた。
彼らが2年になって主力となり、
手ごたえを感じはじめた矢先、
ある"異変"を機にナインの関係もぎくしゃくしはじめる。
そこに現れたのが剛速球の持ち主である転校生、吉沢和馬。
だが、吉沢は人に言えない"ある事情"を抱えており、
彼の態度にチームは一触即発の事態に。
彼の存在は北桜高校の光となるのか、影となるのか。
彼らの最後の夏の大会がすぐそこに迫る…。」

小説の書評の場合、評者が勝手にドラマの面白い展開を
詳報するわけにはいかないので難しいのですが、
とにかく読んだら面白いことは保障します。
野球ファンならずとも読んでみてください。

著者の田澤さんは、すでに『「延長十八回」終わらず』という
40年前の高校野球の名勝負=
「三沢vs松山商」をテーマにした
秀作ノンフィクションを書いているほど野球に詳しく、
この小説の中でも、野球が織り成すドラマの
面白さの秘密が随所で解き明かされているのが魅力です。
「野球は生身の人間が得点するもの。
サッカー、バスケット、バレー、テニス、卓球と、
ほかの競技は全部ボールでしょ。
トライは人間とボールとが一緒だけど、
野球は人間だけがホームインする」――、
「また高校野球の大会は一敗したら終わりでしょ。
一度きりの人生、その一敗までの過程がすべて」――、
だから「野球は面白い」と、
この高校野球チームの女性監督に
語らせているところが圧巻です。


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2008年4月23日(水)

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