旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第185回
ここは現代社会の理想郷か!?

アマデウス社というヨーロッパのIT企業は、
IT社会の理想像を具現化しているような会社でした。
同社のマーケティング部門は、フランス・ニースの
ソフィア・アンティポリスという所にあります。
ニースというだけで環境の良さは想像できると思いますが、
中でもソフィア・アンティポリスは、緑に囲まれた、
言うことなしの環境にあります。

それでいて学校や医療施設などは完備され、
仕事や生活する上での不便さは感じないそうです。
業務に疲れたら、きれいな空気を吸いに外へ出て、
社内食堂(といっても、オープンキッチンの
カジュアル・レストランのような所ですが)では、
新鮮な食材を使った料理を食べることができる。
私も、こんな環境のいい所で働けるなら、
嫌いなサラリーマンになってみてもいいかな、
と、不覚にも思わされてしまいました。
施設を整えるのはそれなりの投資が必要ですが、
街中からは遠いため、土地は安いはずです。
逆に誘致する自治体からすれば、大企業が来てくれて、
税収入は増える。会社にとっても、自治体にとっても
ハッピーだというわけです。

日本にいると「自然に囲まれて暮らす」
という言葉からは、
いわゆる「田舎暮らし」をイメージしがちです。
畑かなんか耕して、自力で家を造るとか。
あるいは山の中にいきなり無機質な工場が現れる、
そんな風景を想像してしまうかもしれません。
しかし、この企業と周囲の環境は、
そんなイメージとはまったく違うものでした。
どう表現していいか分からないのですが、
自然の中にあって、寂れた感じがせず、
静かなのに活気さえ漂っている。
そんな印象でした。
きちんと計画した上で、自然と調和するように町を造ると
そうなるのかもしれません。

ITがもたらす可能性のひとつは、
企業環境の大規模な変革だと言われています。
詳しく説明すると長くなりますが、
データや情報をインターネットで共有すれば、
毎日、全員が会社へ出る必要はなくなります。
取引先との電子決済やデータベースの共有が実現すれば、
お互いに行き来する回数も劇的に減らすことができる。
もちろん完全に在宅勤務には変えられないかもしれませんし、
取引先との行き来をなくすことも不可能かもしれない。
しかし、その回数が減れば、会社は必ずしも便利な場所、
つまりは都心である必要はなくなるわけです。
環境のいい、そしていい条件で誘致してくれる自治体を
探して、そこに移転することもできます。
そうなれば、社員はより環境のいい所に住めて、
通勤時間が短くなれば、家族と過ごす時間も増えます。
現代サラリーマンのライフスタイルを大きく変える、
そんな可能性も秘めているわけです。

上海あたりには世界一背の高いビルがあるそうですが、
今時、そんなものに感心する日本人は少ない。
大都市への一極集中は、労働集約型産業の象徴で、
それによって生じた人口圧やストレスや公害を
どう解決していくかが現在のテーマです。
少し話が大きくなりましたが、
それが経済成長を遂げた後に、
自然と興味が向かっていく方向だということは
今さら言うまでもありません。


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