「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第467回
ピークは過ぎたか「天一本店」

銀座で名を馳せる天ぷらの老舗となると
第一に挙げられるのは「天一本店」だろう。
ところがここ6〜7年は
駿河台は「山の上」出身の店主が独立して開いた
「てんぷら近藤」の人気が際立っている。
西麻布から移転してきた「あさぎ」にも
しっかりと顧客がついている。
ほかに超高級天ぷらの「七星」と「由松」に
老舗の「茂竹」や新興の「天冨良いわ井」も健在だ。

とは言ってもうなぎ屋ほどではないにせよ、
銀座に天ぷら屋はそれほど多くはない。
鮨屋に比べても詮ないことだが
むしろその数は少ないくらいだ。
日本橋や浅草には多くの天ぷら屋が
暖簾を掲げているのに対して、銀座はちと淋しい。
いにしえから関東一帯の河川の川魚や、
江戸湾の小魚を商ううなぎ屋、天ぷら屋が
下町に集中していた名残りだろう。

江戸時代にポピュラーだった鯉・どぜうの料理屋も
めっきりとその数を減じてしまっている。
現代人は川魚の泥臭さを嫌う傾向にあるようだ。
それでも鯉は柴又、どぜうは浅草に
数軒の専門店が残っているのは心強く、
ずっとこのまま息災であってほしいと願う。

イケナい、イケナい、今日は天ぷらであった。
どうもハナシが脇道にそれる悪いクセが出る。
冒頭の「銀座天一本店」に4年ぶりで出掛けたのだった。
親しくしているS富・T子ご夫妻からの
ご招待をありがたくお受けしての会食は
生ビールの乾杯で始まった。

突き出し代わりの菜花のおひたしと
小さなサラダをつまみながら
S富サンの依頼を受けてワインの選択。
白はシャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェの
ピュリニー・モンラッシェ’03年。
赤はブリチェクのモレ・サンドニ’04年を選んだ。

そしていただいた天ぷらを順に記すと

 巻き海老の脚2・巻き海老の身2・
 しいたけ海老しんじょ詰め・きす・
 グリーンアスパラ・稚あゆ・帆立
 めごち・白魚いかだ2・銀杏&絹さや・
 あおりいか・海胆の磯辺巻き
 穴子小天丼 新香盛合わせ

赤字は特筆モノである。
初っ端の巻きがやや凡庸で
行く先に不安を感じたが
その後、なんとか持ち直してはくれた。
それでも4年前に巻き海老は赤字だったのだから
多少の不満が残るのも致し方あるまい。

肉厚ホクホクで旨みじゅうぶんの帆立。
歯ごたえがありながらシットリ柔らかなあおりいか。
それぞれに舌を喜ばせてくれたものの、
上等の白ワインに負うところもあったろう。
名店の名に恥じない天ぷらではあったが
すでにピークを過ぎてしまったのかもしれない。
目新しくも力強いインパクトが望まれてならない。


【本日の店舗紹介】
「天一本店」
 東京都中央区銀座6-6-5
 03-3571-1949

 
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2008年4月16日(水)

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