「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第548回
日本で最も太いうどん

ここ数ヶ月というもの、
次著「昼めしを食べる」のために
明るいうちから都内各地を徘徊してきたが
7月末の原稿アップをクリアして今は一息ついている。

とはいうものの、新しい企画がすでに進んでいて
「J.C.オカザワの居酒屋をさまよう 東京の名店百選」が
それである。
居酒屋となると大御所の太田和彦さんや
なぎら健壱さん、はたまた吉田類さんなど、
個性豊かな方々がライフワークとされているが
少しでも彼らの牙城に迫れればと思っている。

白状すると、昼めしめぐりはツラかった。
酒が入る夜には原稿を書かない身にとって
主な執筆時間は真っ昼間である。
この時間に大阪寿司やとんかつを食べるため、
田園調布や二子玉川で出向いて行くと
かなりの手間ヒマを食われてしまう。

それがやっと夜の東京をさまようことが可能になった。
ここ数日間に、神田「新八」、浅草「酔い虎」、
門仲「大坂屋」、恵比寿「さいき」を周遊してきた。
いずれも「名店百選」入りが確実な店々である。
つい先日は有楽町線・小竹向原に出向いた。
日曜日の夜に集結したのは
友人のIア夫妻とK木夫妻に
メリーウィドウのS水さん。
総勢6人でK木夫妻のホームグラウンドである
板橋区・小茂根の和食店「樽見」の座敷に上がる。

サッポロの赤星ラガーで乾杯し、
同時に土佐鶴の冷酒と芋焼酎・伝のボトルもお願い。
品書きはなかなかに多彩だ。
水なす・夏のおひたし・海鮮サラダなど、
季節感あふれる軽いものから始めると、
それぞれに水準の高さを証明している。

大好物のつぼ鯛一夜干しを発見し、さっそく注文。
ひょっとこのように素っ頓狂な顔つきのサカナは
ほとんどの場合、頭を落とされて一夜干しか
味りん干しの状態で売られるため、
そのひょうきんな全体像を知る人は少ない。
ところが、これがとんでもない美味なのである。
ふっくらとした白身に適度な脂がのっている。
サイズは真あじの開きの3倍ほどはあるから
夫婦二人で食べるには一尾でじゅうぶん。
ちなみに三越本店では1枚1050円で売られている。

あおりいかゲソの唐揚げ、自家製さつま揚げ、
厚揚げ焼きなどをつまみ、締めは冷たいうどん。
秋田の稲庭うどんと三重の伊勢うどんが並存していた。
稲庭は何度も口にしているが、伊勢とは初顔合わせ。
当然、ここは伊勢であろう。
一人に一人前は多いので二人でシェアした。

極太の伊勢うどんは日本で最も太いうどんに相違ない。
和服美人の白魚のような指ほどはあろうか。
これにほとんど真っ黒なつゆというか、
タレが掛かっている。
薬味はきざみねぎとおろし生姜。
一すじつまんで口へ運ぶと
もちっとした食感に甘めのタレがよくからみ、
予想をくつがえすおいしさであった。
本場では1時間もゆでる極太があるらしい。
麺類・パスタ類としては世界最長のゆで時間だろう。
まさに驚きの出会いであった。


【本日の店舗紹介】
「樽見」
 東京都板橋区小茂根1-10-17
 03-3959-0885

 
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2008年8月7日(木)

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