蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第56回 (旧暦2月26日)
タイワンリスの野生化が教えること

鎌倉の山を歩いてみると、
鑿(のみ)で削ったような傷のあるヤブツバキや、
樹皮が剥がれてところどころ裸になった
カラスザンショウなどの木がやたらと目につきますが、
実は、これらはすべてタイワンリスの仕業です。

タイワンリスは、インドからインドシナ半島、
台湾にかけて分布するリスですが、
ペットとして飼われていたものが逃げ出し、
天敵となる動物が居なかったせいもあって
鎌倉地方で野生化して大繁殖したのですナ。
しかも、「カワイイ」と言って
餌を与える住人や観光客がたくさんいて、
最近では人家の庭にもワガモノ顔で姿を見せ、
庭木にも大きな被害を与えるようになってきました。
そのため、近ごろでは、
この「リス害」が大きな地域問題となり、
市役所では希望者にリスの捕獲器を貸し出して
タイワンリスの減少作戦に乗り出しています。

つまり、本来は日本に生息しなかった
タイワンリスというわずか1種類の野性小動物が
新たに割り込んできただけで
その地域の自然環境に
さまざまな影響をもたらすという好例でしょうか。
その地域の自然というものは、
長い時間をかけて
動物を植物とが一体となった生態系を
作り上げてきたわけですから、
そこに新たなものが参入してくれば
タチマチその生態系が掻き乱されるのは当然のことなのです。

これはアザラシの「タマちゃん」の場合もおなじことで、
「カワイイ」と思うのは個人の自由ですが、
だからといって餌をバラまいて
闖入者を無闇に受け容れるようなことは
本当の自然の摂理を考えれば安易に行うべきではありません。
いま、われわれは「自然保護」という言葉を
錦の御旗のごとく無批判に使っていますけれど、
それは決して新参者をも無差別に受け容れることではなく、
自然の掟や厳しさを正しく認識すれば、
ときには「カワイイ」闖入者の参入を拒む
非情さを伴うものであることを
理解する必要があるのですゾ。


ツバキの花を食べるタイワンリス


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