税理士・濱田善行さんの
「こんなんありだ税っ!」

第37
契約書と議事録

会社をやっていれば、
あてにしていたお金が入らなかったり、
急にまとまった金額が必要になったりすることがある。
それでも給料の支払いや手形が落ちるのは待ってくれないから、
会社にそれだけの資金的余裕がなければ、
社長がその分を工面することになる。
この時、例えばそれが一時的なものであるならば、
立替金や仮払金などで処理しておけばいいのだが、
当分戻ってこないような場合には、
きちんと契約書を作成しておくべきだ。
貸付ける相手が自分の会社であるにせよ、
これはまぎれもない金銭貸借であるから、
その契約書がないということは、
会社のお金と社長のお金との区別が曖昧であることを
公言しているようなものだし、
社長が会社に貸付けたという事実の把握がいい加減であれば、
社長が会社から借りることについてもいい加減なのではないか、
と見るのが税務署のスタンスだからだ。

また商法上、社長と会社との取引は自己取引とよばれ、
取締役会の承認が必要とされている。
この承認を証明するために、
取締役会の議事録の作成が求められるのであるが、
小さな会社などでは、
取締役が自分ひとりだけだったり、
取締役の全員が身内だったりすることもあるので、
実際にはいちいち取締役会など開催しないで、
議事録を作っておくだけの場合も多い。
たとえ、取締役会での承認の事実がなくとも、
きちんと議事録を用意しておくことは、
客観性を重視する税務署に対するプレゼンス資料として
絶対外してはならないことなのである。

いずれにしても、
会社のカラーは社長のカラー。
社長がお金にルーズなら社員もルーズになる。
ルーズがルーズをよび不正の温床となることは、
汚れたトイレがどんどん汚れるのを見ればわかる。
契約書一枚と笑うことなかれ。
会社と社長お金をきちんと区別することは、
従業員のお金に対するモラルの向上に必ずや寄与することとなり、
不正防止に役立つことになるハズだ。

また明日。


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