第20回
ブランドケーエイ学7: 組織がデザインを決める。

デザインの評価は、主観的にするしかない。
では誰の主観で決めるかということを前回書いた。
デザインをよくしたいと真剣に考えていると、
クライアントの意思決定のあり方、組織と経営のあり方に、
どうしてもたどり着く。
デザインを受注している我々に、クチ出しすることができない範疇である。

どの会社も、だいたい共通の問題を抱えている。
組織は、階層構造になっており、担当者は若く、上司は年輩である。
多くの場合、担当者が年齢のうえでも感性のうえでも、消費者層に一番近い。
ただ我々の社会では、
担当者に明確に権限委譲されていることが、ほとんどない。
担当どころか、上司にも決定権があるのかどうか。
かならず部長とか社長の承認が必要である。

ケースバイケースで「発言力」はそれぞれに違っても、
「権限」が誰かにあるとはっきりしている場合がまれだ。
稟議という意思決定システムが、なかなかクセモノで、
どこに責任があるのか、誰が実質的な判断をしているのか、
よくわからないままハンコだけが並ぶ。

担当者は、あちらこちらと駆け回って、お伺いを立てる。
担当、課長、部長・・・と意見調整しているうちに、
「おれはこっちの方がいいと思うけどな」などと
余計なことを言う上司がどこかにいる。
すると担当者も、無視するわけにいかなくなる。

管理者は、次のことを理解すべきだ。
自分より10才以上年齢の離れた人たちの感性を理解することは、非常に難しい。
それができないのが当然であって、恥ずかしいことではない。
「おれはまだ若い!」とがんばること自体どうか、と考えてほしい。

社会批判をするつもりもないし、クライアントに不満を述べているのでもない。
我々の社会では、組織はふつう、このようなものだ。
21世紀のビジネスは「ソフト」が重要だ。
そのことは誰もが理解している。
ただ、組織の意思決定のあり方が、「ソフト」に適していないのである。
ソフト向きの人材を得て、その力を発揮できる組織を作ることができれば、
その会社はしばらく独走できるはずだ。


←前回記事へ 2002年9月24日(火) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ