第21回
ブランドケーエイ学8: 大きく見せる人、小さく見せる人。

あるホテルの、結婚式の仕事をしていたときのこと。
とても精力的な人が、担当の課長として、はりきっていた。
この人の発想力は素晴らしく、ぼく自身、考え方をずいぶん拡げてもらった。
彼がある時「この人もすばらしいアイディアマンなんだ」と、
旅行代理店の「社長」を紹介してくれた。

年齢は30代の後半、誠実そうで、身なりのきちんとした、
おしゃれなタイプだった。
彼の会社は、海外での結婚式をあっせんする「ちいさな」旅行代理店だ。
名刺をもらうと、「課長」と書いてある。
社長なのに「課長」とはどういう意味か?
ひょっとすると、会社自体がグループ組織か何かで、地域会社の社長で、
かつ本社の課長という意味かも知れない。

彼に、その意味を聞いてみると、
「いえ本当は、社長なんです。でもぼくみたいのが社長って名乗ると、
お客さんは、あ、小さい会社なんだな・・・って、
なんとなく心配になるでしょう?
この仕事は安心って、いちばん大事じゃないですか。
だから、私の年齢からいっても課長くらいがちょうどいいんです」
「なーるほど・・・」
そう、自分を小さく見せることで、会社を大きく見せる「戦略」だったのだ。
非常に印象的な考え方だった。

その直後、コンピュータの集まりで、40才くらいの、別の「社長」にあった。
ちょうど、ホームページを作れる人を探していたという。
ススキノかなにか、飲食店のショッピングモールみたいなサイトを作りたい、
という。
なんとなく軽薄で、にわかには信用しづらい雰囲気があったが、
彼は、仕事というものは頼めば当然やってくれるものと
思いこんでいたようだった。

カタカナの名前の会社で、
名刺には「株式会社○○○○ 代表取締役社長」と書いてある。
よく聞いてみると、彼一人でやっている会社だという。
なんとなく、この人には1000万の資本金はないな、と直感がはたらいた。

旅行代理店の「社長」とは逆で、自分を大きく見せようとしていることで、
逆に信用を落としているように思えたのである。


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