第22回
組織ケーエイ学7:会社ゴッコ

ほんの数人の会社なのに、専務だの、部長だのと
肩書きで呼び合っている会社がある。
27才のころ、アルバイトした学習塾が、この典型だった。
専務というのは、落合の女房みたいなオバちゃんで、
スリッパをパタパタいわせて廊下を歩き、
アルバイト学生を相手に、言いたいことを言って、ふんぞり返っていた。
社長の姉か、妹か、そういう関係だったか。
部長といっても、このオバちゃんにアゴで使われる立場であれば、
かなりツライだろう。

学習塾というのは、構成員のほとんどがアルバイトの学生で、
正社員は少ない。正社員はみな、なんらかの肩書きをもっていたから、
ヒラ社員が一人でも、いたかどうか。
学習塾では、講師は必ずネクタイを締め、背広で授業をする。
きちんとやっているように見えることが重要で、なめられたらオシマイ、
という意識が強い。実態は、アルバイトすなわちアマチュアなのだから、
その裏返しでこうなるのだろうと思われた。
ぼくには、この組織運営がなんとなく、「会社ゴッコ」のように思われた。

ぼくのその前の職歴は大きな銀行であった。
外国為替の専門を自負する銀行だけあって、さすがにアカ抜けていた。
当時はまだ週休二日が導入する前で、土曜も出勤したが、
いまでいう「カジュアルフライデー」のような習慣があった。
土曜日もいつもと変わらぬグレーの背広を着ていると、先輩に注意される。
「おまえな、土曜日くらいはジャケット着るとか、おしゃれしろよ」
先輩たちは、スチュワーデスとの合コンなどを楽しんでいた。

この会社では、肩書きで呼ばずに、さんづけで呼んでいた。
とくに運動していたわけでもなく、そういう社風だった。
自由な雰囲気をもつ会社ではあったが、
職務にはさすがに伝統の蓄積があって、事務マニュアルと約款で、
がっちりと守られていた。

大きな企業では、組織の弊害がでてきて、風通しをよくしようと、
急に「さんづけ運動」が起こったりもする。
会社の文化をどうつくるか。たった7人の零細な会社なのだが、
ぼくはそんなことを、考えたりもする。


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