第25回
組織ケーエイ学8: マイルスとデューク。

ジャズの歴史において、偉大なリーダーシップを発揮した巨人に、
マイルス・デイビスとデューク・エリントンがいる。
彼らの業績の偉大さについては、比較のしようもないけれど、
この二人のリーダーシップのとり方は、対照的だ。

デュークのバンドは、ビッグバンドで、所帯が大きい。
彼は、一人ひとりの個性を知りつくしていて、それぞれの力を
最大限に発揮できるようにソロパートを配置し、曲を設計した。
彼の音楽は非常に独特のものだが、
メンバーの個性を組み立てることで成り立っているから、
同じ曲でも、他のオーケストラでは再現しづらい。
また、バンドマンの信頼も厚かったようで、メンバーから辞めたいと
言ってきた場合をのぞき、デュークの方からはクビにしたことがない。

いっぽうでマイルスの音楽は、
時代を先取りして、どんどん変容していった。
マイルスのリーダーシップは、音楽についての理想主義であって、
人間的には冷たい面もある。
めざす音楽についていけないとみたメンバーを、容赦なく切っている。

彼のバンドはせいぜい5人くらいだが、
才能あるメンバーがつぎつぎに集まって
何度も「黄金期」を築いている。
歴史的名盤といわれる59年のKind of Blueを録ったときのメンバーは、
コルトレーン、キャンノンボール、ビル・エバンス、
ウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、ジミー・コブとすごい。

これだけの才能を集めたら、
誰がリーダーでもすぐれた演奏になりそうだ。
ところが、まったく同じ顔ぶれで、マイルスの代わりに
フレディ・ハバードが入ったレコードがある
(ポール・チェンバース「GO」)。
このレコードを聴いて、
マイルスのリーダーシップの意味がわかった。

デュークほど器量の大きな人間でもなく、
またマイルスほど厳しい美意識をもっているわけでもないが、
自分も・・・・と考えたくなるお手本だ。
もしふたつのリーダーシップが両立し得ないものであるならば、
どちらのリーダーシップをめざすか、と考えてみたりする。


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