第28回
組織ケーエイ学11: InとOut。

デザインや制作物の品質を上げるために、わが社が考えている
ことの一つに、インプット段階でがんばる、ということがある。
アウトプットだけが仕事のように見えるものだが、
じつはアウトプットの品質は、インプットいかんで決まる。
スタッフに仕事をふるときにも、仕事の背景や、
企画の理由などをかなり詳しく説明するのも、同じ考えからきている。

この、自分なりの法則を発見したのは、大学の試験の時だ。
学部の試験はぜんぶ論文試験だったが、たとえば60分間の試験だとすると、
多くの人は5分か10分でアラスジを考え、
50分くらいかけて、考えながら書く。
ぼくの場合は、30分くらいを考える時間につかった。
この段階で、書くべき内容を固めてしまい、
残りの25分間は書くという作業に集中した。

つまりインプットをほかの人の3〜5倍にして、アウトプットを半分にする。
人より多く勉強したことはあまりないけれど、
この方法で、ほとんどの試験で優をとることができ、
まあまあ優秀な成績で卒業することができた。

このやり方を、ほとんどそのまま仕事に持ち込んでいる。
1週間の時間があるとすると、半日考えて6日作業するよりも、
3日間考えて、最後の3日間で作業をするくらいの感覚の方が、
仕事のクォリティーが上がる。

広告制作の場合は、情報収集と企画が、「考える」ことに相当する。
この部分がプアーだと、仕上げ頼りの仕事になってしまい、
作業スタッフにしわよせがくる。
アイディアが足りないぶん、仕上げの精度で補わなければならない。
ぎゃくに企画がよければ、仕上げはほどほどでも効果的なものができるし、
仕上げがよければ、さらにシャープなものになる。

スイスイ流のやり方は、効率を上げるためにはよい方法なのだが、
最後の最後はとても大変だ。
作業する時間では、2倍くらいの効率でやらなければならないから、
それだけの集中力と技能が必要だ。
必要なときにパッと使えるように、つねづね技を磨いておかなければならない。
考える時間を長く、作業時間を短くというのは、スイスイ流の本則である。


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