第51回
ブランドケーエイ学18: 機能主義と共感主義。

どの商品にも、ほんらいの機能がある。商品開発は、その機能をみがくことから始まる。コンピュータでいえば、CPUの性能、メモリとディスクの容量など。
テレビ、洗剤、携帯電話、ブラジャー、チョコレートにおせんべい。それぞれに機能がある。

広告をつくる者は、クライアントから、まずその機能を訴えることを求められることが多い。機能(性能)のよさや、豊富さを訴える広告のことを、わが社では「機能主義の広告」と呼んでいる。しかし機能主義には、限界もある。

消費者の立場から見れば、機能の競争は、そろそろ愚かしい域にまで到達している。「わが家のテレビは映りが悪い」とか「この洗剤ではあまり白くならない」などと誰かが言うのを聞いたことがあるだろうか。
逆に、一次的な機能が問題とされるのでは、商品群としての未成熟さを反映しているともいえる。

洗剤の歴史において、いちばん強烈な商品は、アタックだった。それまで、白くなる、キレイになると争っていたのに、アタックは小さいと勝負した。じっさい小さいことがどれだけ利便性をもたらしたか、ぜひ奥さんに聞いて欲しい。
また、他社がパワーで勝負していたところ、サンヨーは「排気を出さない」掃除機をヒットさせた。主たる機能で勝負しない事例には、面白いものがいくつもある。

まったく機能の問題としない方向で、「感性と共感のマーケティング」というべき一群がある。auが「面白い方のケータイ」と宣伝したのが典型例だが、お菓子なども、この方向のマーケティングが多い。
ポッキーのCMでは「おいしい!」などと言わない。まず「かわいい!」と思ってもらい、女の子の共感を得ることが目的だ。

神田うのにハアーと息を吐かせる、さわやかなCMがある。この商品の一次機能である爽快さを、青空と手のヒラヒラだけで表現しており、15秒という時間をもてあましている。どこにも共感のない、こういう広告は相当遅れている。
おなじような商品でも、フリスクは、機能を訴えながら表現にウィットがあり、共感の面でかなり先を行っている。
さて現場では、どちらが売れているのだろう?


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