第73回
ブランドケーエイ学27:巨大企業の環境責任。

さいきん企業の責任として、透明性と情報開示をつよく求められているのが、IR(投資家向け企業情報)と、環境対策だ。

現状では、環境広報の多くは「守り」に終始している。「あれもやってます、これもやってます」と言い訳のオンパレードになっているけれども、全体を通してみると、なんとなく納得がいかない。
個別商品ではエコで販促してるくせに、全体となると冷や汗タラリとは、どうしたわけか。企業が依然として、環境問題をアリバイと考え、「できればやりたくない、イヤなもの」と考えていることの現れである。

NTTドコモは、この10年で大変な経済力をもつ会社になり、このブランドを知らない人はいないわけだが、残念ながら「尊敬されるブランド」にはなっていない。どちら かと言えば、マイクロソフトのように「憎まれるブランド」の側にある。かつての北の湖みたいに、ただ強いから憎いのではない。ソニーもこの10年で非常に強大になっ たが、いまも尊敬され、好かれている。

電車に乗れば、誰もが最新の携帯電話をもっているのに気づくと思う。ユーザーの買 い換えサイクルは1年に満たない。デジタルカメラやPDAの新型は普通5万円くらいするのに、携帯の新機種は高くて2万、安ければ100円で売っている。これは、電話 会社が負担してる金額(インセンティブ)が相当あることを示している。このインセンティブのおかげで、買い換えサイクルは極端に短くなり、問題なく使える機械がどんどん捨てられる。
ところが、この会社の環境広報では「携帯電話はずいぶん小さくなり、それだけ廃棄物の面でも環境貢献しています」などと言っているのである。

その一方で、既存のユーザーは依然として高い基本料金と通信料金を支払わされている。そうして大衆から広く集めた金を使って、海外投資と称して何千億円ものバクチに負け、巨額の国富を流出させているのだから、悲しくなる。
この会社は、もうすこし真剣に環境貢献・社会貢献について考えなければならない。
もともとは、国民の資源をつかって始めたビジネスなのだ。

しかしながら人材が豊富で、技術も資金力もある。これからだって尊敬される会社になることはできる。いま自分にもし機会があれば、環境問題を「攻め」につかうマーケティングをやってみる、と思う。


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