第74回
ブランドケーエイ学28:消費リベンジ。

ぼく個人が、いつも「なんとなく」買いたいものは、オーディオとかカメラとか、コンピュータなどのオタク系商品群だ。
実際は、それらはひととおり買って、もう家にあるし、満足もしている。第一また買ったところで、使う機会がほとんどない(楽しんでる時間がない)。それでもいつかカーッとなって、買ってしまうかもしれない。これまでもそうだった。ときどき人は合理的でない買い物をする。

これらの商品は、10代のころ(せいぜい22才まで)非常に強くあこがれていたのだが、当時はとても買えなかった。そのことが心に刻まれているような感じがある。何人かに聞いてみると、それぞれにこのような「思い出のモノ」がある。

若いときに、欲しくて欲しくてしょうがなかったもの、手に入らなかったものが、何年も後になって、どうしても買いたくなる。使わないことはわかっているのに、もっともっと高価なものを「買いつぶしてやりたい!」というような、そんな心理。トラウマを埋め合わせるかのような、この消費心理を、とりあえず「消費リベンジ」と名づけてみる。価格合理性を無視して、エスカレートする傾向もあり、なんとなくサイコな行動である。

じいちゃんばあちゃんが、孫のために出費を惜しまないのは、もちろん孫がカワイイからだが、消費リベンジの心理もドライブをかけているように思う。
自分の子どもが子どもだった頃に(へんな言い方だが)、買ってやれなかったという思いを、孫に買ってあげることで、埋め合わせているような。

ところが、買ってもらえなかった当の子どもの方では、べつにそれほど、深いこだわりが残っているわけでもない。「子どもに十分なことをしてやれない」ことで、傷ついているのは、子でなく、親だということだろうか。
してみると、買ってもらえなかった「モノ」ではなくって、買ってやれなかった「カネ」の方が、怨念のコアなのではないかと思う。

懐かし系のマーケティングがときどきでてくるが、この心理から考えると、思いきり高く価格設定した方が満足度が高くなる、ということにならないか。
ま、仮説に過ぎないが・・・


←前回記事へ 2003年1月30日(木) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ