第93回
組織ケーエイ学32:成功をイメージしてみる。

つのだひろが、NHKでドラム教室をやってたときのことだ。
かれは最初、生徒たちにスティックをもたせない。譜面を見せて、まず口で、このリズムを表現してみろ、という。口で表現できないことは、頭の中にリズムがイメージできていないということだから、スティックをもっても絶対に再現できないのだ、という。
なるほど、と思った。この真理は、手よりも、まず頭を訓練しろというものだ。

ぼくらはクリエーターで、商業的な表現をつくりこむことについてはプロであるが、同じような感じはある。
プランニングの段階で、出力がはっきりイメージできていないものについては、ぼく自身が、デザイナーや写真家やライターなど個々のクリエーターに、明確な指示が出せない。彼らもプロであって、それでもなんとなくものはできてしまう。しかし品質はというと、まあ普通としか言えないものができる。
満足いく仕事ができるときは、最初の段階でハッキリとしたイメージがあり、あとはそれを実現するだけ、という感じが多い。

そうしてみると、経済的な行為であるところの、営業とか経営とかにも同じことがいえるのかもしれない。ぼくらは経営下手、営業下手については自覚はあるが、どこがわるいのかは、よくわからない。
じゃあ逆に、うまくいっているときのことをイメージできるだろうか?
成功している会社、伸びている会社のいきいきとしている姿が、具体的に、そこにある現実として、イメージできるかどうか。
そう考えてみると、会社はおろか「成功している自分」をイメージしたことさえ、ほとんどないことに気づく。
オイオイ、それじゃあ成功できっこないぞ。

成功している自分をイメージできないのは、成功している人を間近に見ていないことに由来する。むしろ成功は、いつも遠くにあるというイメージである。
友だちが脱サラしてがんばってるのを見て、「よしオレも」と思うものだが、眼前に示されてはじめて、自分でも独立をイメージできるのではないか。

とすれば、孤独を気取っていても全然ダメなわけで、経営者は決して孤立すべきではない。成功している人にふれるチャンスが、なんとしても必要だ。他人が成功している様子を、もっと間近に見ておく必要がある。


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