第21回
返済期限が来なくても
借金を全額返済しなければならない場合があります。

借金をするときの契約書の説明について戻ります。

借金をする場合、10年間の分割払い、あるいは1年後の一括払いなど、
返済期限を定めます。

借主は、返済期限まで返済しなくていいわけです。
ところが、一定の場合には、
返済期限前に全額返済しなければならなくなります。

借主が返済期限まで返さなくてもよいことを「期限の利益」といいます。
これに対応して、返済期限が来ないのに
全額返済しなければならないことを「期限の利益の喪失」と言います。

みなさんが個人的に貸し借りするときには、
「期限の利益の喪失」について契約で定めたりしないでしょうが、
金融機関と結ぶ金銭消費貸借契約書には、
「期限の利益の喪失」について書かれています。

実際どういう場合に返済期限前に一括返済しなけれならないかというと、
まず、約定どおり返済しない場合です。
分割払いで、期限までに分割金の返済を1回でもしない場合には、
残額を一括返済しなければなりません。

それから、担保となった建物を勝手に壊したりしたとき、
他の債権者から財産の差し押さえを受けたとき、
手形の不渡りを出したとき、破産の申し立てをしたときなどは、
すぐに残額を返済しなければならないこととなります。

手形の不渡りを出すようなとき、破産するようなときは、
どうせ、一括だろうと分割だろうと返済できませんから
書いてあってもなくてもあまり借主には関係ありません。

ところが、金融機関との関係がうまくいかなくて
利息や分割返済を支払わなかったり、
他の第三者とのトラブルで裁判となり、
判決を取られて差し押さえを受けたりすることは、ありそうです。

そんな場合には、返済期限が来なくても
残額の一括返済を求められることになってしまうのです。

期限の利益を喪失する場合に、
「その他契約に違反した場合」ということもよく書かれます。
契約に書かれていることを守らないと、
返済期限の前であっても一括で返済しなければなりません。
この規定は要注意です。


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2002年9月25日(水)

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