第31回
お金を返せなくなったからといって
直ぐに自宅を出て行かなければならないわけではありません。

お金を借りて事業を始めたけど、取引先が倒産し、
銀行の借入が支払えなくなった。自宅には、抵当権が設定してある。
こういう場合、自宅は銀行に取られてしまい、
すぐに出て行かなければならないと思っている人はいませんか?

実際はそうではありません。
銀行からお金を借りるときに設定した抵当権は、
まず、担保に取った自宅を競売にかける権利しかありません。
だから、銀行は、貸したお金を返してもらえない場合には、
抵当権を付けた借主の自宅を競売にかけます。
競売にかけると、裁判所がその自宅を最低いくらで売るか評価します。
評価が決まったら、一定の期間を決めて、土地と建物を売りに出します。
最近は、裁判所がこの競売物件について、新聞に広告を出していますが、
それがこれです。
そして、裁判所に一番高い値段で買うことを申し込んだ人が
この自宅を買うことができることとなります。
銀行は、買った人が裁判所へ支払った代金から返済を受けることとなります。
抵当権を付けていると、
銀行は他の債権者に優先して返済を受けることができます。

今の説明でお分かりのとおり、銀行は、
抵当権を付けた自宅を銀行の名義にするのではなくて、
差し押さえをして、競売にかけ、裁判所を通じて売却し、
その代金から返済を受けることしかできません。
借主は、競売で買った人から明け渡しをするように求められるまでは、
そこに住むことができます。
東京では、差し押さえから売却まで、少なくとも半年はかかっています。
他の地方は東京よりも長くかかるという話を聞きます。
したがって、返済ができなくなったから、即、家を明け渡さなければならず、
路頭に迷うというわけではありません。
半年くらいは、そこに住み、引越し先を探す余裕はあるのです。


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2002年10月9日(水)

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