第61回
相続放棄・限定承認をすれば借金を相続しなくて済みます。

相続人が、故人が残した借金や
保証債務を相続しないための方法としては、
相続の放棄・限定承認があります。

相続の放棄は、相続を一切しないということになります。
だから、相続の放棄をすると、
借金や保証債務を相続しないで済みます。
でも、自宅や預金などといったプラスの財産も
相続することができなくなります。
限定承認は、自宅や預金などプラスの財産の範囲内で、
借金や保証債務といったマイナスの財産を
相続するという制度です。

例を挙げて説明します。
Aさんが1000万円の預金と自宅(土地建物)、
借金5000万円を残して亡くなったとしましょう。
自宅が4000万円以上で売却できる見込みが高ければ
相続人は相続した方が得です。
ところが、自宅が4000万円を下回る価格でしか
売却できないのであれば、
相続すると相続人はお金を持ち出して
借金を支払わなければならないので損なわけです。

こういう場合に、限定承認をすれば、
4000万円より下回る価格でしか自宅が売却できないときには、
借金返済に足りない部分を相続しないで済み、
4000万円を超えて売却できた場合には借金を返済して、
余ったお金を相続できるということになるのです。

だから、故人の残した財産について、
プラスかマイナスか計算して、
マイナスの方が大きいことが明らかな場合には相続放棄をし、
プラスかマイナスか資産を売ってみなければわからない
という場合には限定承認をするのが普通です。

これまで説明したとおり、相続の放棄も限定承認も、
借金などのマイナスの財産だけを
引き継がない制度ではありません。
上の例で言えば、相続の放棄でも限定承認でも
自宅を手放すことには変わりありません。

残念ながら、
プラスはそのまま引き継ぐけど、借金は引き継がない。
そんなうまい制度はありません。


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2002年11月20日(水)

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