第66回
借金についての遺産分割協議の内容は銀行に対抗できません。

前回、遺産分割によって、法定相続分どおりでなくてもよく、
相続人同士で勝手に決められるという話をしました。

それなら、借金についても、遺産分割によって、
ある人に押し付けてしまえば
借金の返済をしなくても済むなんて考えた人はいませんか?
でも、なかなかそうはうまくは行きません。
具体的に説明します。

父親Aさんが亡くなって、子供Bさん、Cさん、Dさんが
自宅6000万円と銀行からの借金3000万円相続をしました。
この中のDさんは自分でも借金が多いので
破産しようと考えていました。
そこで、Bさん、Cさん、Dさんは、
Dさんに借金3000万円を相続させ、
自宅6000万円はBさん、Cさん2人で相続するという
遺産分割をしたのです。

しかし、借金は相手のあることなので、
法定相続分と異なった分け方をしても
相続人(例で言えばBさん、Cさん、Dさん)の間では
そのような分け方も有効ですが、
借金の相手方(例で言えば銀行)には
同意がない限り無効なのです。

法律上、こういう場合を「対抗できない」という言葉を使います。

上の例で言うと、銀行は、Bさん、Cさん、Dさんの
遺産分割の内容にかかわらず、
法定相続分どおり1000万円ずつを
Bさん、Cさん、Dさんに請求できるのです。

みなさんの中でこんな悪いことを考える人はいないでしょう。
でも、上の例ではなく、借金について遺産分割で決めても
銀行には対抗できないことから
借金の相続で注意しなければならない場合があります。
それについては、また明日。


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2002年11月27日(水)

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