第142回
原状回復について特約がある場合は要注意です。

昨日、賃借人が通常使用することによって生じる
汚れや傷みは貸主の負担だと説明しました。
しかし、契約書に、通常使用によって生じる
汚れや傷みについての原状回復費についても
借主の負担とすると書いてあった場合には要注意です。
判例は、具体的事情によって分かれています。

権利金を支払っている場合や保証金の償却のある場合には、
通常使用による汚れや傷みは
貸主が負担すべきという判例もあります。
しかし、契約書上借主の負担と書かれているのであるから、
借主が負担すべきであるという判例もあるのです。
僕の調べた判例では、
新築のビルに入ったという事情もあるようです。

原則が貸主負担ですから、借主負担とするには、
それなりの合理的な事情が必要です。
1.権利金や保証金の償却額がないあるいは少ない場合
2.賃料が周囲と比較して安い場合
3.天井や壁のクロス、床のピータイルに新品が使われている場合

このような事情がある場合は、
通常使用による汚れや傷みについても借主が
原状回復費を負担するという契約は
有効になる可能性があります。

借主が事業を営んでいる場合の方が、
個人が住居用として借りた場合よりも、
通常使用による汚れや傷みの原状回復費を
借主が負担するという契約が有効になる可能性が高いです。
一般の個人は消費者として保護されますが、
事業を営む人は契約については自己責任を負うからです。

建物を借りるときには、
原状回復費についてはどのような内容になっているのか、
借りたときの天井や壁や床はどういう状態か
よくチェックしましょう。
建物を借りたときの状態について、
写真を撮っておくのも一つの方法です。
気の利いた不動産屋さんは
後で借主ともめることを防ぐために
写真を撮っておいたりしています。


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2003年3月27日(木)

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