第141回
通常に使用して発生した汚れや傷みは貸主の負担です。

事務所や店舗を貸主に返還するときには、
借りたときの状態に戻して返す必要があります。
これを原状回復義務と言います。

建物を返還した後に、敷金や保証金の返還を受けますが、
借主がきちんと原状回復していない場合には、
貸主は原状回復に必要な費用を差し引いて、
敷金・保証金を返還します。
ところが、敷金保証金相当額が貸主の手元にないからなのか、
あっても貸主が自分で負担する費用を少なくしたいのか、
原状回復費用を多額に見積もって、
敷金や保証金を返還しないというケースが増えています。
ひどいときには、原状回復費用としての不足分を請求してきます。
この原状回復費には、どこまでの範囲が含まれるのでしょうか。

判例上は、賃借人が
通常使用することによって生じる汚れや傷みは除き
借主がわざとあるいはうっかり傷つけたり、壊したり、
汚したりした部分について原状回復義務を負うとしています。
これは、建物賃貸借契約が、
借主が借りた建物を使用する対価として
賃料を支払うという契約なので、
建物使用による汚れや傷みは賃料の中に
含まれていると考えられているからです。
権利金や保証金の償却費にも含まれていると言われています。

通常、事務所の場合に揉めるのは、
壁のクロス、床のピータイル、
天井が汚れたり傷ついたりしたから
全部張り替えるというものです。
全部張り替えるとすると相当な金額がかかります。
この壁や床や天井の汚れや傷が、
借主が普通に使っていてもつくものなのか、
借主がわざとあるいは
うっかりやってしまってついたものなのかで、
原状回復義務を負うかどうかが決まるのです。


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2003年3月26日(水)

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