第159回
更新料を契約で定めているのに
支払わなくてもよいかは争いがあります。

先週の宿題は
定期借家契約でない普通の建物賃貸借契約では、
貸主に正当事由がなければ契約は
法律によって更新されていくのだから、
契約に更新料が定められていても更新料を支払う必要はない。

○でしょうか? ×でしょうか?

これは、読者からの質問でした。
僕の連載を読んでいて、
定期借家契約でない建物賃貸借契約では、
貸主に更新拒絶の正当事由がない限り契約が更新されるのならば、
更新料なんて支払う必要がないのではないかと思って、
質問してくれたようです。
これは、なかなか鋭いですね。

まず、契約書に更新料について書いてない場合は、
貸主は借主に更新料を請求できません。
貸主や不動産屋さんは、
契約で書いてなくてもそういう取引慣習があるから
更新料を支払う必要があるというかもしれません。

しかし、そのような慣習は判例上否定されていますので、
契約書に定めていない以上、更新料は取れないのです。
今どき、更新料の支払を定めていない賃貸借契約は
ないと思いますが、
念のため自分の会社、あるいは自分の賃貸借契約を
見てみたらどうでしょうか。
更新料の規定がなければラッキーです。

さて、契約書に更新料の支払義務が規定されている場合は
支払う必要があるのでしょうか?
更新の際に、貸主と契約を結び直す場合を合意更新と言います。
そして、更新の際に何もせず、貸主が更新拒絶しなかったり、
更新拒絶に正当な理由がなかったりしたために
借地借家法によって契約が更新されていく場合を
法定更新と言います。

このうち、合意更新をした場合、
即ち、貸主と契約を結び直した場合は、
更新料を支払う必要があります。
これに対し法定更新をした場合については、
判例が分かれていて、決着が付いていません。
だから、更新料の支払義務があるとも、
更新料を支払う必要はないとも言えないのです。
だから、答えは、一応×にしておきます。

でも、将来最高裁でどちらかの結論が出るまで、
どちらが正解かわかりません。

今回と考えた人の方が正しいかもしれません。
そんなの「いんちきだ」と思わないでください。
法律の問題は、どちらが正しいか解答がない場合も多いのです。
そこはリスクということになります。

更新料の合意があるにもかかわらず、更新料を支払わないでみる。
すると、後で裁判で負けて、更新料の支払だけでなく
出て行かなければならないかもしれないし、
単に後で更新料を支払えばよいだけかもしれないし、
更新料を支払う必要がなくなるかもしれないのです。
後で面倒になるから更新料を支払ってしまうか、
勝ったら得するから、支払わないでみるか、
そこはそれぞれ借主の考え方になるわけです。

更新料は、住宅では1ヶ月分くらいですが、
事務所や店舗だと10ヶ月分なんてものもあります。
これを支払わないで済むならと考えた方は
弁護士さんに相談してみてください。


■今週の宿題■
商品を売る場合につけるおまけについては
おまけが高くて損するのは売主なので
いくら高いおまけをつけてもよい。
でしょうか? ×でしょうか?

お答えをお待ちしております。


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2003年4月21日(月)

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