弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第6回
訴訟報道は無責任?

前回、訴えられたときのコメントについて
お話しました。
その関連で、民事訴訟に関する報道について
気になっていることがあります。

民事訴訟の報道では、
原告がこういう訴訟を起こしたということは
大きく取り上げられますが、
その訴訟がどう解決をしたかは、
余程の事件でない限り報道されません。
原告の訴えについて、
被告がどう反論しているかなどの途中経過は
全くと言っていいほど報道されません。

だから、最初の記事を読んだ人は、
たとえ被告に非がなかったとしても、
何となく被告が悪いことをして
訴えられたんだなという印象を持ってしまいます。

本当に、新聞が中立公正を保つのであれば、
訴訟提起時に訴状も見ていない
被告のコメントを報道するのではなくて、
その後被告がどういう反論をして、
最終的にどうなったという記事を後日取り上げるべきです。

ところが、読者の目を引けばいいという方針なのか、
紙面の都合なのか、
訴えた方の味方をしているのかわかりませんが、
訴訟の提起について報道した事件であっても、
多くが被告側の反論や最終的結論について
報道されることがありません。
僕は、これは問題だと考えています。

僕は、以前、ある地域で有名な被告が
不当解雇を理由に解雇無効の訴えを起こされた事件を
担当したことがあります。
ある新聞が、被告が訴えられたことを記事にしました。
しかし、解雇はきちんと法的な手続きを踏んだものであり、
不当解雇ではありませんでした。
実際、裁判でも被告が勝訴しました。
でも、訴えられたことを取り上げた新聞は
被告が勝訴したことは記事にはしませんでした。

だから、実際には被告は不当なことは何もしていないのに、
新聞を読んだ人には、
あそこは不当な解雇をして訴えられた、
従業員にひどいことをしているというイメージだけが
残ってしまったわけです。

マスコミ関係の方には、
訴えは原告の言い分が書いてあるだけであって、
正しいとは限らないことをよく理解してもらい、
仮に、訴えの時点で
不当な訴えであることがわからないとしても、
一度報道した以上は、
その後被告がどう反論して、
最終的にどういう結論になったか
報道された被告の立場も考えて
責任を持って報道してもらいたいものです。


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