弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第35回
判決までどれくらいの日数がかかるか

民事裁判は、
第33回「裁判はどのように進んでいくか」
で説明したような感じで進んでいきます。

1回目が訴状と答弁書で主張し、
3回ずつくらい主張と反論を繰り返し、
1回証人尋問をして、判決となると、
合計9回くらい裁判が行われることになります。

裁判では、この基本的な流れの中で、
話し合いで解決できないか
和解の話をすることもあります。

裁判は、平均月1回で、
夏休み期間、年末年始、
裁判官の異動時期(3月末から4月)は
裁判の間隔が少し開きますから、
裁判は大体1年くらいかかるということになります。
もちろん、簡単なケースならもっと早く終わるし、
難しいケースはもっと時間がかかります。

お金を借りて返さない場合で
借用書があるような争いようのないケースでは、
そんなに時間はかかりません。
また、賃料を払わないので、
マンションの明け渡しを求められたような場合も
同様に時間はかかりません。
それでも、1ヶ月から2ヶ月はかかります。
裁判は1ヶ月に1回だからです。

裁判が1ヶ月に1回しか開かれないのは
遅いと思う人が多いと思います。
しかし、実際当事者となると、
相手の主張を見て、
そのことについて
以前のことを思い出して資料を探して、
あるいは関係のある人に話を聞いて、
弁護士と打ち合わせて、
弁護士が疑問に思ったことや
必要だと言われた証拠を再度探して、
それを聞いた弁護士は書面にまとめて裁判所に提出する
(書面提出は基本的に裁判の1週間前)ことを考えると、
1ヶ月はあっという間に来ます。

裁判を迅速化するには、
1週間に1度は裁判を開くことにすれば可能です。
しかし、訴訟を起こす方は
訴訟を起こす時点を自分で選べますから
準備に時間をかけることができます。
これに対し、訴えられた方は
訴状が届くまで訴えられないと
思っているのが普通ですから、
準備していません。

だから、期日の間隔を狭くすると
どちらかと言うと訴えられた被告が
不利になると考えます。
ただ、期日の間隔を狭くした方が、
当事者も弁護士も裁判官も忘れないで
集中できるメリットはあると思います。

それから、裁判の期日の間隔を狭くする場合、
裁判所の人員と設備を増加しないと、
処理能力は同じですから、
裁判が始まってからは早いけれども、
始まるまで長期間順番を待つということになります。

すぐに始まるけれど時間がかかる裁判と
始まるまでに時間がかかるけれど
始まると早い裁判のどちらがよいかはわかりません。

あまり自信がないのですが、
アメリカでは、始まってからは早いけれど
始まるまでが長いと聞いたことがあります。
 
今年の連載はこれで終わりです。
みなさん、よいお年をお迎えください。
では、また来年!


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