弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第68回
リストラ問題(従業員の解雇・賃下げ)

リストラという言葉は、
リストラクチュアリングの略で、
本来の意味は、事業の再構築ということでした。

ところが、今、リストラと言えば、
従業員の解雇か
賃下げという意味で使われています。
それだけ、従業員の解雇や賃下げが行なわれています。

右肩上がりで経済が成長していくという予想の下に、
従業員を採用したところ、
経済成長が止まり、
より少ない人件費で
同様の売上げを実現することが
求められる時代になってしまったのですから、
当然と言えば当然の結果です。

しかし、労働基準法や判例は、
簡単に解雇や賃下げを認めません。
そこで、従業員の解雇や賃下げの相談が、
会社側からも、従業員からも、増えています。

従業員の解雇については、
従業員にミスがあれば
簡単に解雇できると考えていたり、
理由がなくても、
1ヶ月の解雇予告をすれば自由に解雇できると
考えていたりする経営者も多いのですが、
労働基準法や判例からすると、それは誤りです。

従業員が、会社のお金を横領したりしたような場合は、
直ちに、退職金も、解雇予告手当ても
支払うことなく解雇できます
(一般に、退職金も解雇予告手当ても支払わないで
 解雇することを懲戒解雇と言います)。

しかし、無断欠勤や仕事上のミスなどについては、
程度や状況にもよりますが、
直ちに解雇することはできず、
従業員に対し注意し、
それでも繰り返すようであれば、
解雇予告手当てを支払って解雇することとなります
(程度がひどい場合は、懲戒解雇も可能です)。

解雇に正当な理由がある場合に、
1ヶ月の解雇予告をするか、
1か月分の解雇予告手当てを支払ってする解雇を
懲戒解雇に対し、普通解雇と言います。

いわゆるリストラを理由とする解雇は、
整理解雇と言います。
整理解雇は普通解雇に当たります。

会社が苦しいという理由だけでは、
整理解雇は認められません。
整理解雇の要件は、

1.会社の財政状況から人員削減の必要なこと

2.人員削減の方法として
  配転、出向、希望退職など解雇しないで
  人員削減する努力をしたこと

3.解雇される従業員の選択が能力が劣るなど妥当なこと

4.会社が労働組合など従業員と十分協議したことの4つです。

削減できる経費を削減しなかったり、
新人を採用したりする一方で
整理解雇することは認められないのです。


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