弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第8回
不当な訴訟を起こされたら

読者からの質問です。
AさんがBさんに対し、
嫌がらせの目的で、1億円を請求する訴訟を起こしました。
Bさんは、弁護士を立て、争い勝ちました。
この場合、BさんはAさんに対して、
「意味のない訴訟で損害を受けた。賠償せよ」
とAさんに訴訟を起こせるのでしょうか?
また起こしたら勝てるのでしょうか?
泣き寝入りはなんとも納得できない感じがします。
というものでした。

具体的には、AさんがBさんに
どれくらいの根拠を持って、訴訟を起こしたかによります。
しかし、普通に考えて、法律の理屈から、
あるいはAさんのもっていた証拠から、
Aさんの請求が通らないことが
明らかであるのにもかかわらず、
嫌がらせ目的で、Bさんに訴訟を起こした場合には、
Bさんは、Aさんに対し、
損害賠償請求をすることができます。

法律上、認められないことが明らかなのに、
嫌がらせ目的などで、起こす訴訟を不当訴訟といいます。
憲法で、国民は裁判を受ける権利を保障されており、
紛争を裁判で解決することが認められています。
だから、最終的に裁判に勝ったからといって、
相手の訴訟が不当訴訟になるわけではありません。
不当訴訟になるのは、証拠もなく、
法律上の理屈も立たないことが明らかなのに、
訴訟を起こして相手に迷惑をかけた場合だけです。

このような不当訴訟を起こされた場合は、
相手に対し、訴訟にかかった費用の賠償請求ができます。
普通は、弁護士費用だけですが、
中には、訴訟準備にかかった労力相当額の請求を認めた
判例があります。
弁護士費用については、
かかった弁護士費用より少ない額で、
相手の請求額の1割が普通です。
相手の請求額の1割も弁護士費用を支払っていない場合は、
認められるのは実際に支払った額となります。

1億円の請求事件では、
旧弁護士会報酬規程では、着手金369万円、
報酬金738万円ですから、
規程どおり支払うと合計1107万円支払うこととなりますが、
裁判では1000万円だけ認められる可能性が
高いということです。
僕は、過去2件不当訴訟に基づく
損害賠償請求をしたことがありますが、
2件とも認められました。
事案は、2件とも、
相手が提出してきた証拠が偽造であることが
訴訟中に判明したケースでした。


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2004年11月4日(木)

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