弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第208回
パソコンで打った遺言書は有効か?

遺産分割の相談を受けると、
少ないですが、
遺言書が残されているケースがあります。
公証役場で作成する遺言書であれば、
公証人という公務員が、
本人に直接内容を確かめて
遺言書を作成しているので、
その有効性を争う余地はあまりありません。

公正証書遺言で、
争いになるのは、
遺言をした人が当時、
痴呆症にかかっていたり、
脳梗塞で倒れた直後だったりして、
遺言者に遺言をする能力が
なかったことを理由に争う場合です。
これを理由に遺言書が
争われるということは多いです。

さて、遺言者が自分で書いた遺言書、
即ち、自筆証書遺言については、
有効性が争われることが多いです。
先ほどの、
遺言能力がなかったという主張の他に、
遺言の筆跡が本人のものと違う、
自筆証書遺言の様式を満たしていない
などの主張がなされます。
法律知識のない人が、
思いつきで、遺言書を作成する、
あるいは作成させる(笑)ので、
法律の要件を満たさないことが多いのです。

自筆証書遺言の要件は、
前回も少し触れましたが、
遺言書の全文を
自筆で書かなければなりません。
法律(民法)は、
本人が自分の意思で
遺言を書こうとしたことを
明らかにするため
ということをその理由としています。

遺産が多く、
いろいろな人に与えようと思うと、
全部手書きをするのは面倒です。
そこで、パソコンを使って、
遺言書を作成したらどうでしょうか。
残念ながら、法律上、
全文、自分で手書きすることを
要求されていますので、
遺言書としては無効です。
パソコンで作成したものが
有効とすると、
全文を他人が作って、
本人に無理矢理署名させる
ということが可能となってしまうからです。

ビデオや録音で、
本人の遺言を記録していた場合も、
法律上、遺言として
認められていませんので、
遺言書としては無効となります。
したがって、ビデオを見て、
それに従うか、従わずに
法定相続分を主張するのかは、
遺族の生き方、考え方の問題となります。


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2006年11月16日(木)

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