弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第209回
割に合わない少額訴訟

少額訴訟というと、
正確には、簡易裁判所で、
60万円以下の請求をする訴訟のことですが、
これから話そうとする少額訴訟は、
請求金額が100万円未満の
比較的紛争金額が小さい紛争のことです。

例えば、90万円の金銭トラブルは、
一般の人にとっては、大金で、
これを払ってもらえるかどうかは、
大きな問題でしょう。
20万円から30万円でも、
一般の方の給料の1か月分ですから、
大金と言えば大金です。
少額訴訟として考えられるものとして、
貸金請求、給料支払請求、
敷金返還請求、侮辱などの
慰謝料請求などがあります。

これらの請求をしたいと思って、
弁護士あるいは司法書士に依頼すると、
おそらく、10万円+成功報酬がかかります。
他人の紛争解決について、
詳しい事情を聞き、証拠書類を確認し、
裁判所に書類を提出し、
裁判所へ言って主張をし、
相手方と交渉するとすると、
そのくらいの費用をもらわないと、
専門家としての責任を持って
仕事をするには、
割に合わないからです。

訴訟では、
証人尋問などを
行なう必要がある場合がありますが、
これは、相当準備に労力が必要なので、
少額訴訟で、
証人尋問をするならば、
10万円+成功報酬をもらっても、
弁護士側は、損をする感じとなります。
逆に、依頼する側からすると、
30万円請求するのに、
10万円+成功報酬を取られるのでは、
手間隙かけて、
何のために請求するのかわからなくなります。

そこで、少額の訴訟は、
依頼する方にとっても、
弁護士にとっても、
割に合わない訴訟なのです。
少額だから、
安く受けるという人もいるでしょうが、
本当にきちんとした
訴訟をしてくれるのかは、わかりません。
紛争は、同じようでも、
当事者ごとに事情が異なるので、
訴訟はオーダーメイドになるからです。
だから、少額訴訟の問題は、
なかなか解決が難しい問題です。


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2006年11月21日(火)

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