弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第270回
元公安庁長官が詐欺で逮捕!

前回、前々回と詐欺の話をしていたところ、
元検察官で、元公安調査庁長官が、
朝鮮総連本部の土地建物を騙し取った疑いで逮捕された
という詐欺事件のニュースが飛び込んで来ました。

この事件は、当初、朝鮮総連が強制執行を逃れるために(?)、
元日弁連会長と元公安庁長官が関与して
土地建物の名義が変えられていたという推測で
報道がなされていました。
それが、朝鮮総連が被害者で、
騙されていたという報道に変わったのですから、
本当にびっくりです。

このコラムでは、
強制執行逃れについてお話をしようと思っていましたが、
引き続いて、詐欺についてお話します。
この事件の概要は、
元公安庁長官らが、朝鮮総連に対し、
代金を支払う意思もないのに、売買契約を結び、
所有権移転登記手続をさせて、土地と建物を騙し取った。
というものです。

前回、前々回のコラムを読んだ人は、
よくわかると思いますが、
この事案のポイントは、
代金を支払う意思や見込みがあったかということです。
容疑者は、代金を支払う意思もあったし、
見込みもあったと主張するでしょう。

それに対し、検察側は、客観的に、
代金を用意する見込みがなかったのだから、
代金を支払う意思がなかったと主張します。
どちらが正しいのかは、
今後の取調べ及び刑事裁判で明らかになっていくでしょう。

ただ、この詐欺は、代金が支払えないことを理由に、
容疑者らは、朝鮮総連に登記は元に戻しており、
本当に騙し取る意思があったのか、
騙し取ってどうするつもりだったのか、はっきりしません。
仮に、詐欺だとすると、
本当は、誰かに転売して
代金を支払わず逃げてしまおう
と思っていたのかもしれません。

契約が成立しただけで、
元不動産会社社長や元公安庁長官に
合計4億8000万円の手数料が入ることになっていたようなので、
こちらがこの詐欺の目的だったのかもしれません。

詐欺なのか、詐欺でないのか、
詐欺だったとすれば目的は何だったのか、
今後に注目です。





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2007年7月3日(火)

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