弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第330回
難しい残業代の問題

最近、労働基準監督署は、
格差問題や過労の問題があることから、
残業代の取締りを以前と比べると厳しくやっています。
みなさんも、ニュースで、
大手企業が、残業代を合計で、
1億円以上支払ったということを耳にしたと思います。
従業員の立場からは、働いた分は、
時間あたりいくらでもらって当然と思っていると思います。
しかし、残業代を支払う経営者側からとすれば、
正規の勤務時間中、
従業員はきちんと働いていたのかと思っていると思います。

残業代を支払うということは、
従業員にとって仕事を時間をかけてやった方が
収入が増えるということになります。
だから、従業員に仕事を効率的に短時間で終わらせる
というインセンティブが働きません。
これでは、経営者にとっては、
仕事に時間がかかる上に、
残業代の支払いが増える
という二重のマイナスが発生してしまうことになるのです。

しかし、逆に、
経営者に残業代の支払う義務をなくしてしまったらどうか
というと、
経営者は、
いくら従業員を働かせても支払額は一定なので、
従業員に対し
できるだけたくさんの仕事をさせることになるでしょう。
現在、労働基準法では、経営者側に、
残業代や深夜割増賃金、
休日割増賃金の支払義務があるにもかかわらず、
従業員の過労死という問題が発生しているのです。
だから、残業代の支払義務が無くなってしまったら、
過労死が増加するとも考えられるのです。

不効率な仕事をして残業代を稼ごうとする従業員と
従業員の健康も考えずに働かせてしまう経営者、
これらをひとくくりで規制することが難しいので、
残業代の問題の解決は、なかなか難しいのです。

ホワイトカラーエグゼンプションは、
1つの解決策ではあったのですが、
経営者側と労働者側の意見が分かれて、
法律として成立しませんでした。
これについては、またいつか説明します。





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2008年2月7日(木)

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