弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第338回
涙を流して反省しても

ちょっと先のことにはなりますが、
みなさんは、裁判員となって、
裁判官と一緒に刑事事件の被告人を裁く立場になります。
そのときに、被告人は、
自らの罪を軽くしようとして、
被告人は、みんな反省していると言うと思います。

被告人は、涙を流すかもしれません。
このような場面に不慣れなみなさんは、
涙を流して、
「反省している。二度とやらない。」
と言われれば、
再度犯罪をしないだろうと信用して、
刑を軽くしてあげようと思うかもしれません。

しかし、それは、甘いです。
反省していると言って、涙を流したとしても、
刑を軽くしたいがための演技かもしれません。
反省しているのは、
しくじって、捕まってしまったことに対してかもしれません。
涙の原因は、自分が裁判所で責められ、
刑務所に入れられようとしている自分に対する
憐れみかもしれません。

反省し、二度とやらないというためには、
なぜその犯罪をしてはならないのか理解し、
その犯罪をしないために
具体的にどうするのかまで言えなければなりません。

飲酒運転を例に取れば、
飲酒運転はなぜしてはいけないのか。
もちろん、他人の命を危険にさらすからです。

では、他人の生命を危険にさらすというのはどういうことなのか。
他人の人生、将来や夢を奪い、
家族から他人を奪ってしまうことで、
万が一それをやってしまうと取り返しが付かないことです。

自分が飲酒運転しないためにはどうするのか。
一番いいのは、飲酒しない、
あるいは自動車に乗らないですが、
お酒を本当に止められるのか、
自動車に乗らなくて生活できるのかなどが問題となります。

飲酒するときには乗らないという場合には、
飲酒する場所までどういう手段で行くのか、
家族が送ってくれるのか、家族は協力可能なのか、
家族が都合の悪いときはどうするか、
タクシー代を払ってまで飲みに行くのかなど、
被告人には具体的に突っ込んで考えてもらう必要があるのです。 

そこまで、よく考えて、
反省していると言えば、
深く考えて反省しているということになります。
それでも、口先だけかもしれないし、
少し時間がたったらまた大丈夫だと思うかもしれないのです。
みなさんも、涙を流して反省していると言われても、
すぐに信じちゃいけませんよ。





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2008年3月6日(木)

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