弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第341回
遺産が自宅だけの人こそ、遺言を!

うちには、小さな家しか財産がないから
相続争いなんかなるはずがないなんて、
思っているお父さん、お母さんが多いのではないでしょうか。
実は、相続で揉めるケースの1つに、
遺産が自宅しかないというものがあります。

例えば、Aさんが、
妻Bと長男C、次男Dと4人家族だったとします。
遺産は、若干の金融資産があるけれども、
ほぼ自宅のみというケース。

まず、Aさんが亡くなるとすれば、
相続分は妻Bが2分の1、
長男C、次男Dがそれぞれ4分の1ずつとなります。
妻Bは、引き続き自宅に住もうとするでしょう。

B、C、Dが仲がよければ、
法定相続分に基づいて遺産分割し、
Bが引き続き自宅に住むということになるでしょう。

しかし、CあるいはDが親の遺産を当てにしていた場合、
自宅を売却して法定相続分どおりに分けよう、
あるいは、妻Bが使う分について
家賃相当分が欲しいといってくるかもしれません。

次に、妻Bが亡くなったときに、
長男Cが同居していたとします。
法定相続分どおりにC、Dが自宅を分けようとすると
2分の1ずつとなります。

長男Cは、引き続き自宅に住みたいと主張するでしょうが、
次男Dは、2分の1について、長男名義にするから、
2分の1に見合うお金を払って欲しい、
できなければ、売却して
代金を2分の1ずつ分けようといってくる可能性があります。

Cが少ない金額しか払わないのであれば、
逆にDは自分が自宅に住みたいと主張するかもしれません。

遺産が、自宅だけしかない場合、
実質的には、相続人のうち1人しか相続できません。
そうすると、誰が自宅を取るのかで揉め、
誰が取るかが決まったとしても、
その代償として、いくら支払えばよいのかで、
また揉めるということになります。

だから、遺産が自宅しかないケースには、
遺言を書いて、誰に取得させ、
代償としていくら払うのかを記載しておいた方がよいのです。

遺言を書いても子には遺留分があるので、
代償金額は、遺留分を考慮に入れて決める必要があります。





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2008年3月18日(火)

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