弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第429回
「派遣切り」というけれど

この前、派遣社員は、リスクが高いのだから、
正社員よりも給料が高くないと
経済的に見合わないという話をしましたが、
その後日経新聞にも同じことが書かれていました。

これについては、派遣社員の方から、
同じ仕事でも、派遣社員は、
派遣先が派遣会社に支払っている額は
正社員よりも多いかもしれないが、
派遣会社から派遣社員に支払われる額は、
正社員よりも少ないというご報告をいただきました。

違法である二重派遣の場合は、
派遣会社の中抜きが二重になるので、
派遣社員の取り分がかなり少なくなるそうです。
この辺を改善することが必要なのでしょうね。

今日も、最近話題なので、派遣社員についてのお話です。
「派遣切り」という言葉がテレビや新聞を賑わせていますが、
契約期間が終了した場合も契約途中で契約を終了させた場合も、
両方ごちゃ混ぜで、「派遣切り」と言われています。
この言葉の使い方に、派遣業協会がクレームをつけました。

マスコミからすれば、
どちらも、派遣社員の生活を危うくするという意味では同じで、
人目を引く表現なので 
よく使われているのだと思います。

しかし、法的に見ると、
契約期間を定めていても、契約期間が終了しても
契約を終了できないとしたら、
それは何なのだろうということになります。

ここ2、3年の好景気で、日本企業は、
それまでの海外でなく、日本でもかなり工場を作って、
大量の日本人を雇用しました。

その要因の1つに、日本でも、契約期間が終了したら、
雇用を終了できる契約社員や
派遣社員の形で雇用ができるようになった
ということがあると思います。

企業にしてみたら、景気が悪くなったら
契約期間を終了できると思って、
多額の設備投資を行なったのに、
これをしてはならないというのでは、
とても先進国あるいは法治国家とは言えないのではないでしょうか?

企業にしてみたら、そのようなことでは、
リスクが予想できないことから、
とても多額の投資はできないということになります。

そういう結果がまずいというのであれば、
法律ができるときに、
その法律が施行されたらどうなるかを予測して
批判すべきだと思います。

また、後から批判するのであれば、
契約や法律に従って行動をする企業を非難するのではなく、
その法律や法律を作った国会議員が非難されるべきなのです。


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2009年2月3日(火)

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