弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第536
代金を一方的に減額するなんて

取引において、一度合意した代金を
支払う方が一方的に下げることは許されません。
そんなことは当たり前だと、みなさん思っているかもしれません。

しかし、実際は、一度合意した代金を反故にしたり、
一方的に減額をしたりするということが行われることがあります。

その1つは、合意したときに、
合意書を交わさなかった場合です。
証拠がないことをいいことに、
後で代金を下げて支払ってくるというものです。

もう1つは、取引当事者の一方の立場が強くて、
他方立場が弱い場合です。
大企業と下請などの取引においては、
「一括値引き」あるいは「割引料」「販売奨励金」の名目で、
一方的に代金を減額することがあるのです。

立場が弱い方は、大企業から取引を打ち切られたり、
数量を減らされたりするおそれがあるので、
なかなか裁判を起こしたりして争うことができません。

そこで、中小企業の保護のために
下請代金支払遅延等防止法という法律があり
(「下請代金法」とか「下請法」と言います)、
大企業が中小企業に対し、
前記のような不当な代金減額などをした場合には、
公正取引委員会は、立入検査を行い、
是正の勧告をすることができ、
違法行為をした大企業の名称を
公表することができることとなっています。

以前お知らせしたように、
僕は、この下請法の講習会の講師をしました。
既に、6ヶ所全て終了しました。

実は、この下請法の講習会の出席者は、
大企業の方が多いのです。

それは、最近は法令順守(コンプライアンス)
ということが強く求められており
大企業は、勧告をなされると、社会的信用が失われて、
売上が減ることにもなるし、
また、大企業に対しては、毎年、役所から書面調査がなされ、
下請法に違反していると、行政指導を受けるからです。

そこで、下請法は、下請企業など中小企業を守る法律なのに、
大企業の方が熱心に勉強するという事態が生じているのです。


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2010年3月11日(木)

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