弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第590回
前代未聞の検察不祥事

毎日、新聞やテレビで、
このニュースが取り上げられてきたので、
今更ですが、
検察官による証拠の改ざんについて、取り上げます。

ちょうど、僕の連載では、
弁護士に対する苦情を取り上げていたところ、
検察官による証拠の改ざんが明らかになりました。

このニュースを知ったとき、
同業者(同じ法律家)として、本当にびっくりしました。

法律家である検察官が客観的な証拠を改ざんしたことは、
もちろん、犯罪ですし、驚きの対象です。

しかし、それと並んで驚いたのは、次のようなことです。
検察官は、本当に慎重で、証拠上危うい事件は、
起訴しないのが普通です。

しかし、この事件では、
証拠上、危ういというよりは、
検察官の主張と全く矛盾する客観的証拠があるにもかかわらず、
それを無視して起訴してしまったということです。

検察官の主張が、6月上旬に指示を受けて、
問題の文書は6月8日に作成したというものなのに、
フロッピーディスクという客観的な証拠では、
文書の作成日は、6月1日にというものです。

このフロッピーディスクの更新日時が誤っていなければ、
被告人は無罪ということになります。

だから、通常の検察官であれば、
フロッピーの更新日時が改ざんされていなければ、
無罪であることは明らかですから、
起訴を諦めるか、
文書作成の時期を6月1日として
その前の5月中に文書作成の指示がなされた
という構成に変更しなければなりません。

しかし、6月1日に文書が作成されたことを示す証拠を
崩さないまま、
6月8日に文書が作成されたとして起訴してしまいました。

このことからすれば、検察官は、
被告人が無罪だということを知っていて、
あるいは、その可能性を十分認識して、
起訴した可能性があるということになります。

検察官がこんなことをするなんて信じられませんが、
事実であり、おそろしいことです。


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2010年10月5日(火)

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