弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第591回
どうして検察官が不祥事を

今回の検察官による証拠の改ざん及び
客観的証拠と矛盾する主張による起訴
という通常では考えられない事態が起きてしまったのかについて
僕なりに考えたことをお話したいと思います。
(既に世間でも言われていることかもしれません)

前回、検察官が有罪となるか危うい事件については起訴しない
という話をしました。
それにもかかわらず、今回強引に起訴してしまった理由は、
今回が特捜事件だったからではないでしょうか。

特捜部とは、特別捜査部の略称で、
検察庁で捜査を行う部署です。

通常の事件では、逮捕や家宅捜索、
取り調べなどの捜査は警察が主に行います。
そして、一般の事件では、
検察官も取調べを行い、起訴できるかどうか、
証拠や証人を吟味して、起訴することとなります。

検察官は、警察の捜査について、
チェックする役割も担っています。

これに対し、
政治や大規模な経済関連の事件など特殊な事件については、
検察庁が自ら逮捕や家宅捜索を行います。
この捜査を行う検察の部署が特捜部です。

特捜部の事件は、検察庁で捜査し、
検察庁で証拠を吟味し、起訴するかどうか判断します。
他の機関のチェックは入りません。

特捜部は、検察庁の中でも、
もっとも優秀な検察官が集まっている部署と言われ、
信頼されてきたからだと思います。

しかし、やはり同一組織がチェックする
というのは限界があるのかもしれません。
今回のケースも、警察と検察の関係のように、
特捜部の証拠を他の専門機関がチェックして起訴をする
という仕組みであったら、起訴されなかった可能性があります。

もう1つの原因は、
特捜部の不敗神話なのではないでしょうか。
特捜部が手がけた以上、有罪にしなければならない。
特捜部が逮捕して捜査を開始したのに、
間違いでしたとは、
特捜部の威信にかけて許されない
というプレッシャーがあったと推測されます。

このような原因から、
前代未聞の検察不祥事が起きてしまったと考えています。

しかし、特捜部の捜査をチェックする機関を作るとすると、
検察官以外で、検察官以上に刑事事件について
詳しい人にやらせなければならないので、
実際にやるとすると、簡単ではないと思います。


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2010年10月7日(木)

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