弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第700回
巨人に重大なコンプライアンス違反の疑い?

巨人に重大なコンプライアンス違反の疑いがあるということで、
巨人の球団代表が記者会見を開き話題となっています。

その記者会見では、巨人の親会社である
読売新聞社の代表取締役会長が、
一度了承したコーチ人事を覆そうとしたこと、
球団幹部の人事を独断で決めようとしたことを問題にしたようです。

親会社の絶対と思われていた最高権力者に対し、
批判をしたことから、支持する声も多いようです。
しかし、球団代表が問題にしたのは、手続的なものであって、
内容が違法ということではありません。

したがって、記者会見で、
同様だと言われたとされる大王製紙やオリンパスの問題とは、
質的に異なります。
大王製紙やオリンパスのケースは内容が違法ですから、
直ちに止めさせ、是正する必要があったものです。

しかし、今回のケースは、
コーチや球団幹部の人事という内容的には、
どちらでも良いのであって、
ただ、内部的に決まった手続を踏んでいたかどうかという問題です。

手続的なことが問題なのであれば、後からでも、
手続をやり直すことは可能です。
例えば、取締役会に諮っていないことが問題なのであれば、
取締役会に諮って取締役会で賛否を決めればよいわけです。
そこで、他の取締役も最高権力者の案に賛成するなら、
それは、まさにコンプライアンス上仕方の無いことだと思います。

しかし、球団代表は、最高権力者に直談判し、決裂すると、
いきなり記者会見をしたようです。
それは、逆の意味で、社内手続に違反しているようにも思えます。
最高権力者に対し、反旗を翻したという意味では、
勇気のある行動だったかもしれませんが、
記者会見すべきだったかどうかは疑問があります。

最高権力者は、当然、この記者会見を批判しているようです。
しかし、今回の件の発端は、
自ら認めたコーチ人事を承諾していないと
これまた社外の記者たちに話したことにあるのであって、
それはわざと承諾していたことを否定したのであっても、
承諾していたことを忘れていたのであっても、
それには、問題があり、
場合によっては球団代表に対する名誉毀損にもなると思います。


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2011年11月17日(木)

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