弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第711回
相手の財産調査は難しい

みなさんは、裁判に勝てば
お金は取れると思っている方がほとんどだと思います。

しかし、実際は、裁判をやって得られる判決は、
(1)みなさんの言い分が正しいので相手に対する請求権を認めるということ
(2)相手が任意に支払わなければ相手の財産を差し押さえることができる
ということしか保証してくれません。

裁判で勝っても、国が、相手からお金を取ってきてくれたり、
判決に基づきお金を支払わない相手に対し
罰を与えたりはしてくれない仕組みになっています。

そこで、任意にお金を支払わない相手からお金を取ろうと思ったら、
相手の財産を差し押さえる他ないのです。

では、相手が財産を持っているかどうかがわかるかというと、
相手が財産をどれくらい持っているかなどは、
プライバシーに関することなので、通常はわかりません。

相手が、優良な会社に長年勤務しているということであれば、
辞めて転職しにくいという状況であれば、
給料を差し押さえることができますし、
相手が持ち家であれば、
その持ち家を差し押さえることができます。

預金がある銀行や掛けている生命保険会社がわかれば、
これらも差し押さえることができます。

しかし、持ち家かどうかは、
相手の住所地の不動産登記簿謄本を法務局で取ればわかりますが、
勤務先は、親しい関係になければわからないでしょう。

しかも、わかっていたとしても、
転職をされてしまえば、転職先を調べなければなりません。

預金口座や加入している生命保険などは、
どこの銀行や生命保険会社なのか
よほどのことがないとわからないと思います。
銀行や生命保険会社は、守秘義務があるので、
相手が預金口座を持っているかや生命保険の契約をしているかを、
弁護士が照会しても、回答してはくれません。

というように、なかなか裁判で勝っても
相手の財産調査をすることは、難しいのが現状です。

今年の連載はこれで終わりです。
みなさん、よいお年をお迎えください。
来年もよろしくお願いします。


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2011年12月27日(火)

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